6 神田達也
——あなたも小さな罪を隠すために噓をついたことはありませんか?
あいつの言葉のおかげで記憶の倉庫からかけらを引っ張り出すことができた。このかけらで、俺は思いつくことができた。名刺一枚につき一個の質問。この質問を聞けば、大木真が五人の中から絞り込める。俺は五人に向かって言ったんだ。
——僕の嫌いな食べ物は、なんですか?
それが俺の質問。この質問で絞りきれる、正直に答えてさえくれれば。あいつが五人を見てゆっくりうなずくと、一番左の炭水化物の男から一歩前に出て答え始めた。
——しいたけだと思います。
二番目のショートカットの女は答えた。
——ブロッコリー。
三番目の筋肉質の男は答えた。
——しいたけ。
四番目の女は答えた。
——ゴーヤです。
五番目、背だけでかい、巨神兵みたいな男は答えた。
——ブロッコリー。
しいたけが二人、ブロッコリーが二人。ゴーヤが一人。この質問で一人に絞り込める。はずだった。あいつは俺の目をじっと見つめて聞いた。
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