高度成長期、人々の欲望に応えた薄桃色の娯楽の殿堂【ロサ会館】

数々の街歩き取材を重ねてきた、文筆家・路地徘徊家のフリート横田氏。2020年の大イベントを前に、東京の街が大きな変貌を遂げつつあることを肌で感じているといいます。その危機感から始まった本連載。
第十三回は、池袋西口に鎮座するロサ会館。古びることでより味わいの増した、繁華街のランドマークについて。

池袋西口のランドマークといえばどこか?

東京芸術劇場? それとも立教大学?

いずれもその通りだが、“繁華街”のシンボルは、ロマンス通りのアーチをくぐり、進むと見えてくる。

亀甲のようにもハチの巣のようにも見える模様がビッシリと、薄桃色の外壁に施されたビル。てっぺんには薔薇の花のネオン。その下には「ROSA」の文字。通りの奥にどっしりと鎮座する、ロサ会館である。

薔薇の花の下には、ゲームセンター、ボウリング場、ビリヤード場に洋食屋などの飲食店、キャバクラまである。総合アミューズメントビルと言っていいだろうが、たたずまいを見ると、ここは「娯楽の殿堂」と呼びたくなってくる。

さて、この味のある娯楽ビルは、いつどうやって生まれたのだろうか。


娯楽をもとめた戦後の人々
それに応えた映画館。

戦前、伊部禧作なる実業家がいた。父親も実業家で、明治期に製鋼会社を興した人であった。父は大きく業績をのばすも、第一次大戦後の不況で業績は悪化。それを見ていた息子の禧作氏は「金ヘン(製鋼業)は景気に左右される。これからは草カンムリだ!」と思い立ち、製薬会社をいくつも興し、どれもが成功をおさめた。

その後、製薬業を続けていたが日本は戦争に突入、そして終戦。

昭和20年4月の城北大空襲で、池袋の街も焼け野原となっていた。あらゆる物資が欠乏した時代にあっても人々が欲したのは、衣食住だけではなかった。ここで禧作氏は思い立つ。「戦後に必要なのは娯楽だ」。

当時、娯楽の王様といえば映画。禧作氏は、早くも終戦翌年の昭和21年に映画館、シネマ・ロサをオープンさせる。ロサとは、スペイン語で薔薇。社長に据えた義母・尾形きん氏の手腕もあり、相当な繁盛をしたようで、連日の満員御礼。最終的には隣接して他に3つもの映画館を建設している。池袋駅西口に、戦後復興の象徴のように映画の花を咲かせたのである。

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東京ノスタルジック百景 シーズン2 ~今見ておきたい昭和の風景

フリート横田

ライター兼編集者として、数々の街歩き取材を重ねてきたフリート横田氏。著書『東京ノスタルジック百景』からのcakes連載が好評を博し、満を持して書き下ろしの連載がスタート。2020年の大イベントを控え、急激に変化しつつある東京。まだわず...もっと読む

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コメント

hissan_3 モダーンセンス溢れるアミューズメントセンター!「会館」がいかにも昭和っぽい響きだ。 https://t.co/w60MvVVjqn 10ヶ月前 replyretweetfavorite

hibicoto TSUTAYAが入っていて、深夜通い詰めた。懐かしい。>>> 10ヶ月前 replyretweetfavorite

nishiaratter 事務所からも近いロサ会館。今度ゆっくり眺めてみたい。 10ヶ月前 replyretweetfavorite

replicorn ミサイル・コーガンとの出会いが運命的😮 10ヶ月前 replyretweetfavorite