読みたい人、書きたい人のミステリ超入門

第3回 謎がなければ始まらない(1)

ミステリの本質は「謎」である。「謎」の持つ牽引力で、ページをめくらせるタイプの小説、と言っていいかもしれない。とはいえ推理クイズではないから、謎さえあれば小説部分はどうでもいい、というわけでもない。
 それでもやはり、ミステリは、「謎がなければ始まらない」のである。
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 mysteryという単語を辞書で引いてもらえれば分かるように、ミステリの本質は「謎」である。「謎」の持つ牽引力で、ページをめくらせるタイプの小説、と言っていいかもしれない。とはいえ推理クイズではないから、謎さえあれば小説部分はどうでもいい、というわけでもない。
 それでもやはり、ミステリは、「謎がなければ始まらない」のである。
 そしてその謎は、魅力的であればあるほど良い。また、できる限り、物語の冒頭で示されるべきである。

 どこかのオフィスに死体が転がっていて、わらわらと野次馬が周りを取り巻き、「さあ、犯人は誰でしょう?」と問われても、「どうせオフィスに関連のある人が犯人なんでしょ」と開き直られたら終わりだし──実際問題、登場人物の誰かが犯人なのである──、現場に愛想がない。また、読んでも読んでも事件が起きないと、これは本当にミステリなのか? と不安になってしまう。
 もちろん、物語の初っぱなに事件を置くのは、なかなかに難しい。前段の説明や登場人物の紹介も、ある程度は必要になる。

 それを解決する方法の一つが、「プロローグ」だ。
 多くのミステリで、冒頭にプロローグが配置され、ショッキングな場面が描かれているのは偶然ではない。要は、「これから、しばらく読んでもらうと、こういう事件が起こりますよ」というのを、先にお知らせしておく役目を担っているのだ。
 つまり、最初の「引き」や「つかみ」を作るわけである。おお、こんな凄いことが起こるのか! と印象づけられれば、しばらく何も起こらなくとも、読者は作品に付き合ってくれる。ゆっくりと丁寧に、事件の背景や人物を描けるというわけだ。

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新潮社
2018-01-19

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読みたい人、書きたい人のミステリ超入門

新潮社yom yom編集部 /新井久幸

ミステリ作家志望者、必読! 「新潮ミステリー倶楽部賞」「ホラーサスペンス大賞」「新潮ミステリー大賞」など、新潮社で数々の新人賞の選考に携わってきたベテラン編集長が考えるミステリの読み方・書き方の<お約束>とは――。電子書籍文芸誌「...もっと読む

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