JR大阪駅から徒歩5分の場所にある築浅の複合ビル「コフレ梅田」。この無名のビルをドイツ銀行グループの不動産ファンド「RREEF」(リーフ)が昨年末に買収していたことが明らかになった。取得額は70億~80億円程度と、外資ファンドの投資案件としては一見地味だが、見方を変えると、日本への不動産投資をめぐる外資勢の動きを象徴するものと言えた。
1000億円を超す巨額買収が珍しくなかった2007年ごろの不動産ミニバブル期と比べると、金額は確かにたいしたことはない。しかし、それは売りに出される大型物件が少ないという側面が大きい。例えば、大手デベロッパーには外資ファンドなどから、こんな問い合わせが寄せられるようになったという。
「カネはある。いい物件があればぜひ教えてほしい」。ミニバブル期と異なり、大手デベロッパーが都心の優良物件をガッチリと押さえているため、そう簡単には大きな売り物は見つからない。
だからこそ、地方にも目を向けざるを得ないのだ。冒頭の案件からはそんな背景が浮かび上がってくる。大型の買収案件が少ないため、「まだ外資ファンドの動きは鈍い」といった声が多く聞かれるが、すでに水面下では優良物件を求めて蠢(うごめ)いているのだ。
アジアの富裕層もまた
動き始めている
人気バッグメーカーの「TUMI」が入居していた東京・神宮前の店舗ビル「ヴェクサ表参道」をアジア系の富裕層が1月に買収した。取得額は約14億円で、個人の買い物として“2桁(億円)”が出たと、業界内でも話題となった。
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