━売れない会社の価値はゼロ━
会社を売るとき、会社の売上や利益はもちろん重要だ。ブランド価値が必要な話もした。ただ、会社を売る際には、ほかにもいくつかの落とし穴が存在する。どんなに良い事業であろうが、売れない会社の価値は0円だ。ベンチャーキャピタルからプレバリュー10億円で1億円調達していようが、100%株式の買い手がつかない会社の価値はゼロなのだ。
あなたの会社は商品である。どんなに機能的でも、傷があればディスカウントされるし、欠陥があれば買ってもらえない。ここからは、せっかく事業が良いのに売り物にならなくなってしまうようなリスクを回避する方法を教える。
僕は「会社を作るのは芸術作品を作るのと同じ」だと思っている。売るときも芸術作品と同じように売ろう。芸術家が作品を売って生計を立てるように、起業家は作った会社を売って生計を立てるのだ。毎月の役員報酬なんてチップみたいなもんだ。芸術家を見習え。キングコングの西野さんを見習え。
芸術家は、アドバイザーやオークションハウスや美術館の人に作品の成否を相談しながら、シナリオを作って作品の価値を高めていく。この過程で多くの人の熱狂があるから、価値が定着して高い値段が付くのだ。価値を付けるためにも、様々な助言や知恵を吸収すべきだ。
本来は、会社を作るときと同じくらい、売るときのやり方も考え抜かなければならないのだ。むしろ、会社を作った瞬間から、あるいは会社を作る前から、どこに売るかも考え始めるべきなのだ。会社は、長い時間をかけ、苦労して大切に育てた「作品」である。
それでは、これからよくある落とし穴を具体的に挙げていく。よくある落とし穴は、法務、会計にある。
━法務の落とし穴━
「契約書」がない重大な取引などというものがあったりする。仲良くなってノリでスタートしてしまい、契約書が存在しないという会社は意外とある。また、大手の企業に言い負けて、不利な契約を結ばされていることでも企業価値は減少する。
理想は、会社を立ち上げたときから売る前提で、売却するときの障害にならないような契約書を結んでビジネスをすることである。そうしていなかった場合は、売る前に急いで契約内容を見直した方が良い。 クライアントやフランチャイズ先だけでなく、従業員との雇用契約、就業規則も見直そう。契約書一枚で会社の値段は大きく変わる。
そんな細かいことは自分の仕事ではない、というのはやめよう。それが雇われ癖というやつだ。会社は自分の作品なのだ。少しでも企業価値を損なう可能性があるのならば、徹底的に対策する。それが、会社という作品を作るプロの姿勢だ。 「甲および乙」が「甲または乙」となっているだけで会社の価値が大きく変わる重要な契約だってあるかもしれないのだ。
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