━事業計画は必ず言語化しろ━
おぼろげにでも、どんな事業を行うかが決まったら、次にやるのは「事業計画」の作成である。事業計画なんて作らなくていいという人もいるし、実際に作っていない会社も多いが、僕はこれには反対である。後々、会社を売りたいのであれば、事業計画は必ず作ろう。そして、必ず言語化しよう。
事業計画は事業の設計図であり、地図である。事業計画がないと、その事業がうまくいっているのか、そうでないのか、予想と違うことがあるならそれは何なのかを判断することができない。資金調達の計画を練るためにも、その基となる事業計画は不可欠である。
さらに言えば、会社を売却するというゴールがあるのなら、事業がきちんと成長しているのかを測るため、なおさら作っておくべきだ。事業計画がないと、M&Aの際、買い手に安心感を持ってもらえず、買い手がつかなかったり、売却時に会社の価値が下がったりする。
M&Aで売却価格を決める際には、ディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)が使われる。現時点でどれくらいの稼ぎを生み出すかを基に、その会社の将来性まで含めた現在価値を算出するやり方である。事業計画がなければ、将来生み出される可能性のある利益を算出できないため、一過性の投資や、今後の展開で得られる利益が売却価格に正しく反映されなくなってしまう。会社の将来性を勘案してもらう意味でも、精度の高い事業計画を作り慣れていたほうがいい。最後の最後に、その年の事業計画の精度が売却金額を左右することだってあるのだ。
━短期間で作り、見直しに時間をかける━
僕が事業計画作りで心がけているのは、まず最初のたたき台をごく短期間で作成することだ。作成には時間がかかるものなので、ぼちぼち作ればいいかと思っていてはなかなか完成までたどり着けない。初めから完璧を目指すのではなく、まずは素早く完成させよう。
それが事業計画作成の第一のステップだ。たたき台ができなければブラッシュアップにもかかれない。そのブラッシュアップにもかなりの時間を要する。完全なるものを目指してゆっくり作っていくより、たたき台をスピーディーに作り、その後のブラッシュアップに時間をかけるほうが効率的である。フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグは、社内にこんな言葉を掲げているという。
「Done is better than perfect.(完璧を目指すより、まず終わらせろ)」
事業計画に関してもこの精神でいこう。
ありがちなのが、一度作ってその後は放ったらかし、というパターンである。事業計画は、事業の進み行きを見ながら絶えず作り変えていくべきだ。月1回、年に4回などと頻度を決めて定期的に見直し、その都度改善を図ろう。
ここで、僕の事業計画の作り方と、ブラッシュアップの方法を紹介する。まず、短期間でたたき台を作成したら、最初のうちは2週間に1度は見直しをする。業界の変化や気がついたことをメモとして盛り込んでいく。そして、年末年始やお盆休みなどまとまった時間が取れるときに、丸2日ほどかけて大幅に見直す。
見直しのやり方は工夫したほうがよい。社外から専門家を招き、その方の意見をもらいながら事業計画を見直すのはおすすめだ。僕はこれを「壁打ち」と呼んでいる。ITの専門家とITの観点からディスカッションをしてみたり、同業の人を招いて同業者の視点から意見をもらったりすることもある。
自分たちが事業を展開している業界はもちろんだが、その周辺の業界も刻一刻と変化する。意識的に定期的な見直しを行い、外部の意見を取り入れることで他社動向や業界の変化をつかむ。その繰り返しで事業計画の精度を上げていくのだ。
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