前回は、「パブロフの犬」の実験を紹介して、レスポンデント条件付けについて考えてみました。今回は、オペラント条件付けについて見てみましょう。前回、レスポンデントは「受動的な」、オペラントは「能動的な」という意味だと説明しました。いったい、どのように違うのでしょうか?
そのヒントになるのが、スキナー・ボックスを使った実験です。ネズミが入った実験用の箱のことで、スキナーという昔の学者が考えました(鳩を使った実験もあるそうです)。簡単に言うと、それは次のようなものです。
この箱の中には、レバーがあります。レバーを押すと、えさが出てくる仕組みになっています。ネズミはどうするでしょうか?
最初は、レバーをなめたり、かじったり、なでたり、押したり、ひっぱったりします。この5つの行動のうち、えさが出てくるのは、レバーを押した場合だけです。
引き続き、ネズミは、レバーを、押したり、かじったり、なでたり、なめたり、ひっぱったりします。この5つの行動のうち、えさが出てくるのは、レバーを押した場合だけです。
さらに引き続いて、ネズミは、レバーを、かじったり、なでたり、なめたり、ひっぱったり、押したりします。この5つの行動のうち、えさが出てくるのは、レバーを押した場合だけです。
おいおい、なにコピペしているんだ、と思われたかもしれません。しかし言いたいのは、箱の中のネズミは、ある種の試行錯誤を重ねている、ということです。こうした繰り返しのプロセスを経て、ネズミはレバーを押すとえさが出てくるということをだんだんと学び、押すという行動を身につけるのです。
前回、学習とは行動の変化だと言いました。たしかに行動の変化が生まれましたね。この学習をオペラント条件付けと言います。
パブロフの犬とスキナー箱のネズミはどのように違うのでしょうか? 犬と違って、ネズミは複数の選択肢から何かを選びとるという行動をとっています。一方、犬は選ぶということはしていません。このように考えると、犬よりもネズミの方がより能動的に行動していると言えます。こうした理由から、パブロフの犬はレスポンデント条件付けであり、スキナー箱のネズミはオペラント条件付けであると言えるのです。
さんざんネズミの話をしました。前回と同様に、「これってヒト、ひいては消費者と関係あるの?」という疑問を、皆さんは抱いていると思います。そのあたり、考えてみましょう。
ネズミがレバーを押すという特定の行動を学習することを、強化と言います。正確に言うと正の強化と言います。正の強化とは、何か(レバーを押す)をすれば良い結果(えさがもらえる)が得られるということを身につけることです。
これは人間の行動でもよくあります。例えば、デパートで化粧品を買うと、ポイントがたまったり、試供品をくれたりします。お客さんは知るわけです。買い物をすれば、ポイントとか試供品をくれるのだと。それが理由となって、再びそのお店を訪れて化粧品を買う人は少なくありません。飛行機のマイレージなどは、この正の強化のメカニズムを使って、同じエアラインを使い続けさせようという試みであると言えるでしょう。財布の中に、ポイントカードがたくさんある人っていますよね。これは、正の強化を活用したマーケティングのための道具が、財布の中に詰まっているということです。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。