PART2 実践編
〔 第4章 〕起業の本質はコミュニケーション戦略
起業家人生は、楽しい。これは自信を持って言える。ただし、楽しいことばかりかというと、決してそんなことはない。起業は苦しいことも多いから楽しいのだ。
ここでいう「起業が楽しい」とは、「楽ちん」という意味ではなく、「エキサイティング」という意味だ。
起業は年々やりやすくなってきている。日本はまだ起業しにくいとか、海外と比べれば……などと言っている人もいるが、本当に起業はしやすい環境に変わってきている。まず、起業に対するリスクが下がっている。
昭和の時代には、借金が返せなくて自殺する経営者だっていた。しかし今のベンチャー起業家は、図々しくも借りたり出資を受けたりしたお金が返せなくなったからと言って自殺までしない。むしろ事業に失敗したと同時に新しい事業計画を持参し、「もう一度チャンスを!」と迫ってくるのが今どきの起業家だ。某有名起業家が、某有名ベンチャーキャピタリストに、ピボットする際に土下座させられたなんて話は実際に聞いたことがあるが、それ以上のことは聞いたことがない。まあ、そもそもベンチャーキャピタリストの金を起業家が溶かしてしまったからといって、本来謝罪する必要もないのだが……。
もっと昔の話をしよう。500年以上前の話だ。コロンブスとかが生きてた時代だ。この時代は、起業家は社会的弱者だった。なんてったって、航海させてもらう代わりに、リアルに命を賭けなければならなかったのだ。つまり起業家とは、本質的には弱者だったのだ。当然のごとく、投資家に命を賭けさせられていたのだ。さすがにこのような時代だと、「サクッと起業したら?」とは無責任に言えないが、今はそんなことはない。ただ、何はともあれ起業したら、生き抜かなければならないことは現代でも変わりない。
抜け目なく戦略を練ることが必要だ。サクッと起業してサクッと売却するまでの間は、起業家たちはプライドを捨てて必死に生き残らなければならない。
起業の戦略というものを考えると、僕は、起業の本質はコミュニケーション戦略にあると思う。投資家とのコミュニケーション、顧客とのコミュニケーション、従業員とのコミュニケーション、役員とのコミュニケーション、付き合う業者とのコミュニケーション。会社を売却するときには買い手とのコミュニケーションも必要だ。起業においては、コミュニケーションを成立させられるかが勝負である。
第4章を進める前に少し前置きをしておくが、正直、ここから先の話は個別性が非常に高い。そのため、すべてを網羅できるわけではない。起業から売却までのことで真剣に相談したい人は、直接僕に連絡してほしい。では、第4章を始めよう。
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