なぜ、正田さんは新たなベンチャーをやり始めたのですか?

「会社を売却することを前提に起業をする」という斬新な働き方を提案する、正田圭さんの新刊『サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方』の特別掲載、第21回。起業家は何を思い、考えているのか。正田さんが30代に達成すべき、ご自身の目標を語ります。


━TIGALA創業物語━


Q なぜ、正田さんは新たなベンチャーをやり始めたのですか?

 これは非常によく聞かれる質問である。なぜ、すでに引退してもよいのに、またリスクをとって事業を立ち上げるのかと、当時の顧問税理士は何度も何度も僕に言っていた。自分ならもう絶対に引退して、仕事をせずに生活すると。僕は冗談で、「そういう考えの人は、これだけのお金を作ることができないんですよ」と答えたが、ここらへんのことについても真面目に答えよう。

 僕の起業家としてのキャリアスタートは15歳に遡る。詳細は『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』(CCCメディアハウス刊)に譲るが、インターネットの登場に合わせてSEOの会社を立ち上げたのが始まりだ。

 それから30代に突入するまでの10年強の間に、シリアルアントレプレナーとして多彩な経験を積んだ。多彩と言えば聞こえはよいが、成功した数より失敗した数の方が間違いなく多い。リーマンショック以降は、多数の事業再生案件に携わり、経験を積んだ。そこで立て直した会社を売却していくなかで、2017年に新しい事業をTIGALAでスタートした。

 会社を売却してからすぐに新しい事業を立ち上げ始めたわけではない。僕は、自分を見つめなおす期間を1年以上とってから、TIGALAを立ち上げた。これまで出会ったすべての人たちに感謝し、すべての気持ちの整理がついてから起業した、なんてきれいなことは言わない。どちらかと言えば、もう関わりたくないなと思った人たちの連絡先を削除していった。

 1年間以上、いろんな人と話をして、何もせずただいろんなことを考え、自分を見つめなおす時間をとった。長期間何もせず、人生を振り返るタイミングを、僕は意図的に作った。8年前、一度事業に大失敗したときも、僕は何もしない時間を作った。その時は、二度と同じ失敗を繰り返さないように、どんな経営判断が今の状態を招いたのか、次に同じ状況になったらどう行動すればよいのか、自分が身につけておかなければならない知識は何だったのかを振り返り、自分をレベルアップさせるための時間に費やした。

 それから6年たち、また自分を振り返るタイミングがやってきた。  正直、引退ということも、しようと思えばできるタイミングだったので、また事業をやるかどうかについては真剣に悩んだ。

 起業して事業を立ち上げるのはエキサイティングな行為だ。ただ、エキサイティングというのと楽というのは異なる。倒産のリスクだってあるし、せっかく数年かけて築き上げてきたものがなくなってしまうリスクだってある。

 人間、本来入ってくるお金が入ってこないことよりも、入ってきたお金を失うほうが精神的なダメージは大きい。10代や20代前半の頃と違い、家族もある。子どもだっている。このタイミングで何を選ぶかによって、全く異なる新しい人生がスタートする。やり直しはきかない。正直なところ、今回、新たな事業を始めるのは、今までの起業人生の中で一番怖かった。

 しかし、こうも思っていた。野球をやっている小中学生は誰もが甲子園を夢見る。県大会ベスト8を目標にする子どもはいない。会社経営の世界で言うと、甲子園で優勝したのが孫正義。世界に出ればビル・ゲイツやジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグらもいるなかで、自分はまだまだ草野球の世界しか経験してない。ビジネスの世界に早くから生きてきた以上、やっぱりメジャーリーグの土を踏みたい。どのような会社を立ち上げればメジャーリーグに参戦できるのか。中古品の買い取りサービス、エネルギー事業、仮想通貨取引所など、20以上のビジネスを考える日々が続いた。

 真の手がかりとなるものは、自分の15 年前の体験の中にあった。日本の金融機関は、起業したばかりの自分に見向きもしなかったことをふと思い出した。2005年当時、ベンチャーという言葉自体が受け入れられず、「学生で起業? 学生時代に会社を売ったってどういうこと?」と全く理解を示してくれなかった。そこで外資系金融機関との付き合いが始まったが、それでも的を射たサービスは受けられなかった。

 投資銀行は、案件を紹介して実現させ、その手数料で潤う。でも、僕が本当に欲しいのは、どう案件を手がければよいかのHOWであり、WHYなのに、回ってくるのは分厚い案件概要書ばかり。しかも、成功報酬型の商売のため、大手ばかりにサービスが集中し、知識もお金もなく困っていて、将来の成長のために投資銀行サービスを本当に必要としているベンチャーや中堅企業までサービスが行きわたっていないことに気が付いた。

 そこで、ミドルマーケットの案件を活発化させると同時に、投資銀行業界のビジネスモデル自体を破壊しようと思い、その事業をTIGALAで行うことにした。

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サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方

正田圭

本書は「会社を売却することを前提に起業をする」という斬新な働き方を提案します。「起業はハードルが高い」「会社を売るのはさらに難しい」と思われがちですが、「会社を作って売却するのは、世の中に数ある儲け話の中で、一番確実で、一番地に足の着...もっと読む

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コメント

justin999_ いや、でもサクッと起業してサクッと売却する方が資産築けるかも(ただのcakesの宣伝 https://t.co/5SfRfaniDJ 10ヶ月前 replyretweetfavorite