税金対策は必要か。M&AかIPOか。

「会社を売却することを前提に起業をする」という斬新な働き方を提案する、正田圭さんの新刊『サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方』の特別掲載、第20回。「実は、IPOではM&Aほどまとまった額の大金は入ってこない」。さらに具体的に企業売却に踏み込んだ、必読のQ&Aです。

━税金対策は必要か━
Q 資産管理会社は作ったほうがいいですか?

 日系の証券会社に多いのだが、IPOを目指していたり、会社の規模が大きくなってきたりした顧客に対して、「資産管理会社」を活用した税金対策を提案することがある。メリットとしては、相続税が安くなるなどいろいろあるというのだが、僕はこれにはあまり意味がないと思っている。

 資産管理会社の仕組みはこうだ。現金で資産を相続させようとすると高い相続税を取られる。そのため、資産管理会社を作ってその中に現金を置き、相続側には資産管理会社の株を相続させる。現金より株の評価のほうが安いため、相続税も安くすむというわけだ。不動産を買ったらもっと安くなる。

 資産管理会社は、事業の組織再編上、作ったほうが税メリットが多い場合に作る分にはいいと思う。例えば2017年10月の改正で、株式移転と分割型分割をかませた株式譲渡スキームの税メリットが高い状況になっている。このようなタイミングで会社を売却して、結果としてできてしまったというのはアリだろう。

 ただ、子どものために相続税対策をしようと資産管理会社をつくっても、相続をする瞬間には会社設立時の前提条件が変わっていて、相続税対策にならないことが多い。1代継ぐならまだしも、2代継ぐとなると、そんな長期予測など正確にできないため、ぐちゃぐちゃになって逆に税金で損してしまうことが多い。

 数多の会社の事業承継の相談に乗ってきた僕が見てきた範囲では、資産管理会社を使って、それが効果的に働いた例はあまりない。一般社団法人を作っておくと相続税がかからないという話もあるが、これも裏がある。相続する人間がいない場合は、国がすべてを没収するのだ。

 税制というものはとてもうまく作られており、税金を浮かせたいと思ってもなかなかうまくいかないようにできている。瞬間的な税金対策ならまだしも、数十年スパンの税金対策はまず狙ったとおりにいかないと思ったほうがいい。ちなみに、資産管理会社の設立など組織再編に関しては、うちのTIGALA株式会社は日本でもっとも強いと自負している。相談のある人は、office@tigala.co.jp まで気軽にご連絡いただきたい。

━M&AとIPOを天秤にかける━

Q M&AではなくIPOでエグジットを目指すのはどうでしょうか?

 IPOを目指すというのは、アリだ。大アリだ。

 僕が起業したときなんかもIPOを目指す人は非常に多く、「起業して5年でIPO」を合言葉にがんばっている起業家はたくさんいた。日本では「上場企業」に対するプラスのイメージが根強い。歴史や社会的信用を感じさせるからだろう。事業が軌道に乗った際は、誰もがIPOという選択肢を一度は考えるのではないだろうか。ただ、IPOによくある誤解なのだが、IPOをした後は、自由気ままに旅に出ることはできない。これは、M&Aをテーマにしたセミナーを開くと必ずと言っていいほど投げかけられる質問でもある。要は、「会社のエグジットの手段として、IPOとM&A、どちらがいいのか?」という質問だ。

 言っておきたいのだが、IPOとM&Aは全く異なるものだ。勘違いしている人が多いので、まずその点を整理しておきたいと思う。会社を売るということは、M&Aの「売り手側」になることである。M&Aで会社を売れば、会社の価値に見合う大金を手にすることができ、あなたの元からは事業が手離れする。自由な時間も手に入るというわけだ。

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サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方

正田圭

本書は「会社を売却することを前提に起業をする」という斬新な働き方を提案します。「起業はハードルが高い」「会社を売るのはさらに難しい」と思われがちですが、「会社を作って売却するのは、世の中に数ある儲け話の中で、一番確実で、一番地に足の着...もっと読む

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