━人生は「変える」のではない、「買える」のだ━
何度も繰り返すが、会社を売却したら、人生の選択肢がすごく増える。
なぜかと言えば、時間とお金の両方が手元にあるからだ。
会社を売却すると、日々の経営で回している金額とはケタの違う大金が入ってくる(ことが圧倒的に多い)。
日々、事業を伸ばし、売上を上げるためにがむしゃらに働いていたが、ある日、M&Aの話がまとまる。売却前には通常業務に加え、事業譲渡に関わる手続きなどで多忙をきわめるだろうが、やがてその多忙な日々も終わりを告げる。会社はもう自分のものでなくなる。事業も従業員も買い手側に行ってしまう。
そして、自分の口座には見たこともない金額のお金が振り込まれる。
そして、徐々に「自分は会社を売ったのだ。自分が作った会社の価値が、この金額なのだ」という実感がわいてくる。
バカな浪費をしなければ、何年も仕事をせずとも困らないぐらいの金額が手に入るはずだ。僕は10代の頃、バカな浪費をしたために、最初に会社を売却したときに手元に入ってきた1億5千万円は、年を越す前になくなった。
そんな馬鹿の話は置いといて、会社を作り、それを大きくして売るという経験があると、とにかく人生の選択肢が増えるのだ。人生が変わるといっても過言ではない。
人生が変わるというか、変えることができるようになるのだ。もっと生々しい表現をすると、人生を「買える」のだ。
会社を売却した後、留学することだってできる。僕も20代の頃、会社売却のタイミングで留学を考えたこともある(結局しなかったが)。
会社の売却後に留学するメリットは、自費で、自分のタイミングで行けることだ。
大企業に就職すると、会社の費用で海外留学できる制度もある。ただ、この場合は自分を評価する立場にいる上司から色よい返事をもらえなかったり、同じく留学のチャンスをうかがう同僚にチャンスを奪われたりするなど、思わぬ外的要因に左右されてしまう可能性がある。だが、自分で費用と時間の都合をつけられれば、好きなときに費用を気にせず留学できる。
僕の場合は留学には至らなかったが、旅のほかに、やりたかった勉強に集中して取り組んだ。最初の会社経営において、ファイナンスや資本政策の知識の足りなさを痛感する場面が多々あったため、独学で勉強を始めたのだ。
本を数千冊買って、ホテルの一室で数カ月間読みふけることなんて、金がなきゃできない。
勉強はとにかく金がかかる。昔(平安時代とか)から、勉強は金持ちがやるものだ。僕は公認会計士試験に必要な勉強を独学で行ったが(資格は取っていないし、試験も受けていない)、その教材は、近所の書店で参考書を数冊といったものではない。資格専門学校でしか買えない、約70万円もする高額なものである。たいていの人は、こうした学校に2年間通って勉強しなければ合格できない。だから大学生がダブルスクールで勉強したり、大学卒業後も浪人して受験したり、とりあえず社会人となって働きながら勉強している人が多い。ただ、働きながらの資格取得は、よほど意志の強い人でなければ難しいことも知られている。
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