人生と筋トレの共通点とは?

「会社を売却することを前提に起業をする」という斬新な働き方を提案する、正田圭さんの新刊『サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方』の特別掲載、第11回。筋トレは適切なインターバル(休憩時間)を取ったほうが筋力増強に効果的なことが知られています。人生も筋トレと同じ。戦略的にインターバルを取ることで、人生の中身は格段に濃くなる!

━適切なインターバルが人生を濃くする━

 これは僕の想像にすぎないが、山田氏は旅を楽しみながらも、次に自分が会社を起こすとすればどんな業種が最適か、自分が何をやりたいのか、考えるともなく考えていたのではないだろうか。
 会社を売り、旅をしたことで、ふだんは仕事に追われて改めて問い直すことのないような事柄も、じっくりと考える時間がふんだんにあったと思う。

 自分の得意なこと、本当にやりたいことは何なのか?自分はこの業界に向いているのか?もっと違うことができるのではないか?同じインターネットサービス事業を立ち上げるにしても、もっとうまいやり方があるのではないか? こういうことは、全くの自由な時間がなければ、なかなか腰を落ち着けて考えられるものではない。

 人間は影響を受けやすい生き物だ。今勤めている会社や周りの環境に、どうしても自分の意思決定が引っ張られてしまう。周りの目が気になる。
 その枠から飛び出して発想したり、生き方を変えたりするのは至難の業だ。だからこそ、働き方を考えるための「働かない期間」を意識的に取るべきだ。

 会社を売って、毎日決まった時間に出社して仕事をする必要がなくなり、生活費を考えなくてすむ状況を作ろう。
 筋トレは適切なインターバル(休憩時間)を取ったほうが筋力増強に効果的なことが知られている。人生も筋トレと同じだ。戦略的にインターバルを取ることで、人生の中身は格段に濃くなる。

 友人の一岡君からこんな話を聞いた。「実は、本田宗一郎もサクッと作った会社をトヨタに売却している」。本田宗一郎は、東海精機重工業を豊田自動織機に売却した後、「人間休業」と称して1年間の休養に入った。そして、休養後に創業した会社が本田技術研究所だ。
 実は、この手の話は多い。ソフトバンクの孫正義さんも、自動翻訳機を松下電器に売却後、1年以上にわたってビジネスモデルを考え、今のソフトバンクを作ったのだ。 「踊り場」を意図的に作って「人間休業」することが、想像以上に人生を飛躍させることにつながる。


━ジュエリーデザイナーから投資銀行家に転身した僕の妻の売却体験━

 手前みそな話だが、僕だけでなく僕の妻も、起業して会社を売却している。
 僕の妻は、僕と同じく名古屋の生まれだが、中学校を卒業後すぐに上京した。会社を作ったのは21歳の時だ。それまではジュエリーデザイナーの仕事をしていたのだが、ラスベガスのジュエリーショーに行ったときに、一目ぼれしたアクセサリーブランドがあったようだ。

 このジュエリーは、どのようなものかというと、いわゆる「トラベルジュエリー」というものだった。
 ハリウッドの女優や大富豪のマダムは高価なジュエリーを好む。しかし、数千万円、時には1億円を超えるような本当に高価なジュエリーを実際に着けていると、紛失したり盗まれてしまうリスクが大きい。そこで、高価なジュエリーは銀行に保管して、普段は精巧に作られたフェイクジュエリーを身に着けているのだ。そして、そうした文化は大富豪のセレブやマダムたちだけではなく、一般の女性たちの間にも浸透してきており、旅行やスポーツ、仕事の際には高価なジュエリーや時計をせずに、フェイクジュエリーを着けるというライフスタイルが流行ってきていた。

 もちろん、フェイクジュエリーだからといって、安っぽいものを身に着けるわけではない。使っているのは人工ダイヤモンドだが、つくり自体は高価なジュエリーと全く同じだ。
 例えば、裏から光が通るように穴をあけたりとか、カットの細かい石を丁寧に並べたりする技術は、ハイジュエリーと何ら変わらない。このような「遊び」ジュエリーが、ジェットセッター的なライフスタイルを好む大人の女性たちの間で流行っていくだろうと、僕の妻は予測したらしい。僕の妻は、このブランドホルダーの会社に連絡をして、日本国内での独占販売権をくれないかという交渉を持ちかけた。しかし、相手からの音沙汰はなかった。当然といえば当然だ。会社も作っていない、ビジネスの実績もない、言ってみればただの女の子だ。独占販売権を付与するのなら、大手の販売ネットワークをもっているところか、商社などときちんと契約したい、というのが相手の本音だろう。

 ただ、僕の妻はここで諦めなかった。アポも取らず、いきなりロサンゼルスまで押しかけて直談判しに行ったのだ。直談判した結果、まさにその会社は日本の某企業と独占販売契約を結ぶ寸前だった。
 その日本企業は15カ国以上から服飾雑貨を輸入しており、全国のホテルなどに150店舗以上も展開している大手企業だった。交渉は難航したが、結局、僕の妻は日本国内での独占販売権及びアジア圏内での販売権を得ることに成功した。

 事業の立ち上げには苦労したものの、4年後には百貨店6店舗に常設店舗を展開することに成功し、ネットショップも無事立ち上がり、その年のクリスマスの売上はネットショップだけで1000万円を超えた。ビームスやユナイテッドアローズなどの店舗にも商品を卸せるようになった。

 百貨店での常設店舗展開までは長い道のりだった。
 都心の百貨店は、常設店舗を出店するための審査が非常に厳しい。最初から都心の百貨店には店を構えることができないため、地方の百貨店で期間限定ショップをトライするように促される。

 僕の妻は、神戸そごうや名古屋タカシマヤの期間限定ショップを何度か出店し、そこでの実績を認められてようやく都内百貨店に出店できるようになったのだ。出店は、百貨店側から急に声をかけられるため、常に準備をしていなければチャンスを逃す。たいてい「2週間後にオープンできますか?」と聞かれ、そこでタイミングが合わないと他の企業に声がかかってしまう。百貨店への出店を精力的に考えていた時期は、いつ声がかかっても出店できるように、いつも余分に在庫を抱えるようにしていた。

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サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方

正田圭

本書は「会社を売却することを前提に起業をする」という斬新な働き方を提案します。「起業はハードルが高い」「会社を売るのはさらに難しい」と思われがちですが、「会社を作って売却するのは、世の中に数ある儲け話の中で、一番確実で、一番地に足の着...もっと読む

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