━会社経営の「おいしい部分」を何度も味わう━
起業と売却を何回か繰り返すと、会社経営の「おいしい部分」を何度も味わえる。
会社も人の一生と同じで、誕生(創業)から成長、衰退までのライフサイクルがある。会社を売却するときは、成長期のどこかで売ることになる。成長曲線に入っているタイミングで売ったほうが大きな利益を見込めるからだ。
日々の会社経営は、案外地味な業務が多い。ところが会社を売却するとなると、弁護士、税理士の協力も得ながら会社全体で準備に追われ、一種の「狂騒状態」が生まれる。ふだんの地味な毎日と比べれば、まるで「お祭り騒ぎ」である。
そんなお祭り騒ぎの結果、ついに会社が売却される。大金が手に入る。そのお金を使ってしばらく休み、またおもしろいビジネスを立ち上げる。うまくいけば、また売却することができるかもしれない。
このように連続起業をすると、会社を立ち上げて新規事業を伸ばし、価値を最大化したところで売るという、会社経営という仕事のもっともおいしい、エキサイティングな部分を何度も体験できるのだ。
10年間で1つの会社しか経営しなかった人と、3つの会社を立ち上げて3回売却した人、どちらのほうがより人生の経験値が高まるだろうか? 僕は、間違いなく後者であると断言する。
例えば、飲食店を20年経営し続けた人がいたとする。1つの店を立ち上げて20年存続させるのは、並大抵の努力でできるものではない。
ただし、一店舗で学べることは限られると思う。初めての起業なら、最初の3年で得る学びは相当大きいはずだ。5年目までも、何かしら学ぶことがあると思う。しかし、最初の5年間とその後の15年間を比べると、後の15年間における全く新しい学びはどうしても少なくなってくるのは仕方のないことだ。
ある程度事業を成長させられたら、どこかのタイミングで売って、少し違った領域で、あるいは全く別の業種で会社を始めてみよう。すると、また違った人生を送ることができるはずだ。
人生の「濃さ」というものは確実に存在する。自分の人生を振り返ってみても、濃い時間、薄い時間があったと思う。はっきり言って、起業して数年間は、誰もが「濃い」時間を過ごすことになる。
『100万回生きたねこ』という絵本がある。知っている人も多いと思うが、一匹の猫が輪廻転生を繰り返していく様を描いたものだ。ある時は王様の猫、ある時は船乗りの猫、ある時は泥棒の猫、ある時はサーカスの猫となる主人公は、数々の経験を積み、猫界で人気者となった。そして、100万回目の輪廻転生を経て最も満足できる人生を過ごした後、二度と生き返ることはなかったという話だ。 二度と生き返らなくてもよいと思える人生を過ごすためにも、濃い人生を過ごそう。
━会社を売却すると寿命が延びる?━
ファイナンス的に説明すると、会社を売るという行為は、5年後、10年後にしか手に入らないはずの利益を、今、まとめてもらうことである。
会社の値段は、会社が将来稼ぎ出すキャッシュフローで決まる。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。