青くさい起業家の発言は、信用するな!

「会社を売却することを前提に起業をする」という斬新な働き方を提案する、正田圭さんの新刊『サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方』の特別掲載、第6回。起業するのに崇高な理念はいらない。それよりも、自分が起業によって何を得て、何を実現させたいのか、そういう自分の気持ちや欲望としっかり向き合うことの方が大事です。

━崇高な理念は後からついてくる━

 起業について僕がもっと言いたいのが、崇高な理念は後からついてくるということだ。
 初めて起業して「この業界の非合理性を解消したい」とか「世の中を変革したい」といった青くさい起業家の発言をネット記事などでよく見かけるが、僕はそういう発言を一切信用していない。「初めて起業したのにその業界の何がわかるんだ?」「世の中を変革したいって、そもそもあなたは世の中をわかっているのか?」……なんてひねくれたことを思ってしまう。

 例えば、子どもがおもちゃを欲しがるとする。欲しい欲しいと駄々をこねる。そして、そのおもちゃを買ってもらうものの、数日たつとそのおもちゃに飽きてしまい、次のおもちゃを欲しがっている。
 もちろん、その子どもは本当にそのおもちゃが欲しかったのだろう。その場では心の底からそう思っているから駄々をこね、泣き叫んで自己主張したのだ。おもちゃを欲しいという気持ちには嘘偽りはないのだが、一生そのおもちゃを大事にするかというと、そんなことはない。

 初めて起業する起業家の理念も、そんなもんだと思う。そもそも社会に出たことがないのに、社会に対して問題提起ができるわけもなければ、課題を発見できるわけもない。
 崇高な経営理念を思いついたから起業するなんて話は、薄っぺらい。経営理念やミッションは、起業して、幾度もの経営の危機を乗り越えながら作り上げ、練り上げることによって出来上がっていくものだ。

 僕自身、「意識低い系の起業」の極みだった。僕のことを知らない人のために説明しておくと、僕は
15歳で起業した。僕の家はごく平凡なサラリーマン家庭である。父親は会社勤め、母親は専業主婦で、とくに裕福だったわけではない。僕は親の希望で、経営者や医者の子息が通う名古屋の中高一貫校に通っていた。そこで友人たちとの「経済格差」に愕然としたのが起業のきっかけだ。

 洋服一つ買うにしても、どこかへ遊びに行くにしても、友人たちと僕とではお金の使い方がまるで違った。なかには親からクレジットカードを持たされている友人までいた。
 持ち物も違った。ふだんの服装は制服だが、シャツやベルトはみんな好きなものを身につけていた。僕の友人たちはグッチのベルトをしていたり、バーバリーのシャツを着ていたりした。通学用のカバンがエルメスやプラダというのも珍しくはなかった。もちろん、僕はユニクロ一直線だ。彼らの持ち物は高級ブランド品ばかりだったため、そんな環境に囲まれて、僕もおのずと高級ブランドに興味を持ち始めた。 「僕もお金持ちになりたい」  その一心で起業した。

 なので、当時、僕に明確な経営理念やミッションがあったわけではない。経営者を親に持つ友人を見て、「お金持ちになるなら、会社を経営しなきゃ」と感じたから、会社を作った。小遣いを増やしたい同級生のなかにはパチンコやスロットをする人もいたが、僕は会社経営をすることを選んだというだけの話だ。
 その後は、作った会社をなんとか回していこうとがむしゃらに働いた。損失を出したこともあるし、詐欺師にだまされたこともある。失敗を数え上げたらキリがない。会社のことに一生懸命で、学校の勉強はおろそかになっていた。

 ただし、起業はおもしろかった。
 うまくいかないこともあったが、知恵を絞ればその分、成果がお金となって返ってくることだってあった。月に数千万円単位の売上をコンスタントに上げられるようにもなった。だから、大学進学よりも働くことを優先した。

 こんな風に進んでいったのが僕の起業人生だ。

 ここには、世界を変革するような崇高な理念はないかもしれないが、「生き残るのだ!」という強い情熱だけはしっかりと存在した。

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サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方

正田圭

本書は「会社を売却することを前提に起業をする」という斬新な働き方を提案します。「起業はハードルが高い」「会社を売るのはさらに難しい」と思われがちですが、「会社を作って売却するのは、世の中に数ある儲け話の中で、一番確実で、一番地に足の着...もっと読む

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