お金と時間に関する、多くの人たちの勘違い。

「会社を売却することを前提に起業をする」という斬新な働き方を提案する、正田圭さんの新刊『サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方』の特別掲載、第5回。「お金よりも時間の方が大切」は、そもそも間違いです。あなたが設定しなければいけない問いは、「お金も時間も両方手に入れるにはどうしたらよいだろうか」なのです。

━「お金」か「時間」か?━

 お金と時間について、多くの人たちが勘違いしているようだ。
 すぐにお金と時間を交換したがる。先ほども話した通り、「雇われ」体験に酔って、時間を売って金にするという「洗脳」をされてしまうからだ。

 そのため、「お金よりも時間の方が大切」とか「自分の時間は無料」とか、そんな話をしたがる。
 お金と時間は交換できるものではあるが、交換だけしていても何も産み出さない。お金も時間も、両方作り出すものなのだ。お金が大事か、時間が大事かという質問は、そもそも質問の設定が間違っている。ゴミ箱に何を入れてもゴミになってしまうように、質問が間違っているとどんなに考え抜いても正しい答えは手に入らない。あなたが設定しなければいけない問いは、「お金も時間も両方手に入れるにはどうしたらよいだろうか」だ。

 実は、この話をしたいのは学生だけではない。むしろ、バイトやインターンをこなしながら大人になっていった、すべての世代の皆さんにも言いたい。

 あなたたちも、時間の切り売りをしてしまっていませんか?

 サラリーマンとして会社から給料をもらっているからダメだとか、自営業者だから大丈夫だとか、そういう話をしているのではない。
 サラリーマンでも面白い働き方をしている人はいる。例えば、幻冬舎の箕輪さんだ。箕輪さんは、本業は幻冬舎のサラリーマンにもかかわらず、自由に自分のやりたい事業をしている。NewsPicks アカデミアを立ち上げるかと思えば、箕輪編集室なんていうオンラインサロンもやり、副業もガンガンしている。とにかく自由だ。言ってみれば「サラリーマン起業家」である(最近、本当に会社も作った)。箕輪さんのすごいところは、社長の見城徹さんから「お前はどこから給料をもらっているんだ!」とつっこまれても、「外から幻冬舎の給料の3〜4倍はもらってます」と堂々と切り返すところだ。「会社で〝価値〞を稼いで、外で回収してる」とご本人は言い切る。そして、そういう社員が増えたほうが「会社の価値が上がる」とも。こういうスーパーサラリーマンは、時間の切り売りなど絶対にしない。

 逆に、自営業者でも時間の切り売りをしてしまっている人は多い。起業したからといって、みんながみんな時間の切り売りをしてないわけではもちろんない。打合せに追われ、取引先の顔色ばかりうかがう。いわゆる「代表取り締まられ役」ではダメなのだ。
 ガムシャラに働くのが悪いと言っているのではない。「自分の時間を使って役員報酬をもらう」という感覚がダメなのだ。起業家は、自分の価値を高め、自分の会社の価値を上げることにフォーカスするべきだ。

 本書は、ある意味で働き方改革の本だ。就職しているとか、自営業者だとか、学生とか、そんなことは関係なく、自分の時間をお金に換えるとか、お金を時間に換えるとか、あっちを立てればこっちが立たないみたいな発想から脱却するための、根本的な働き方改革をしようという提案だ。

 お金も時間も確保する。そのための指標として、29歳までに1億円という目標を立ててみた。実際のところ、あなたが30代だろうが40 代だろうが50代だろうが、そんなことはどうでもよく、お金も時間も両方手に入れるための戦略をきちんと考えようということである。
 そして、その戦略は、連続起業家という生き方にある。


━起業家などという職業はない━

 ところで、僕は「起業家」という言葉に少し違和感を持っている。便宜上、自分も起業家という言葉を使っているし、本書でも起業家という言葉は使わせていただくが、「起業家」という職業は厳密に言えば存在しない。そもそも、起業家という「肩書き」が流行り始めたのも、割と近年のことだと思う。

 例えば、耳鼻科医と内科医がいたとして、どこかでばったり会って「あ、同業ですね」と言っているのは想像がつくが、飲食店の社長とIT企業の社長を同じ起業家という職業でひとくくりにしてしまうのは、いささか乱暴な気がする。
 豆腐屋のおやじとソフトバンクの孫さんが「同じく1丁(兆)2丁(兆)と数える起業家同士ですね」なんてしゃべっていたらもはやギャグだ。

 一昔前の、いわゆる昭和の時代は、日本人のほとんどが自営業者であった。
 そのため、起業したところで「ふーん」くらいの感じだった(はずだ)。となりの鈴木さん家が八百屋を始めようが、豆腐屋をやっていようが、何もすごい話ではないだろう(当時のことはよくわからないが、教師になったとかのほうが、「すげぇ!」ってなったんじゃないだろうか)。

 しかし、今はサラリーマンが増えた。三世代サラリーマンなんてのは、まさに今どきではなかろうか。しかも、今は奥さんも共働きなんて家も増えているため、三世代のうち5人がサラリーマンやOLなんて家も珍しくもなんともない。
 こんな時代だからこそ、「起業家」なんて言葉が使われるようになったのであろう。起業する人が相対的に少なくなったから、珍しくてスゴイって感じになってきたのだ。八百屋とか、電器屋とか、洋服屋は存在するが、起業家というのはちょっと違う。

「起業家」という言葉がピンとこないとするならば、何ならピンとくるのか?
「起業は手段である」ということだ。 もう一度言う。起業とは「手段」なのだ。それを「起業家」という枠組みに当てはめようとするから、「起業家」はこうあるべきだというフレームワークができてしまい、手段としての起業を見失ってしまう。起業とは、自己実現のための手段である。そのため、起業するときはこうあるべきだとか、どうあるべきだとか、そんなことは本来考える必要のないものである。僕自身、最初の起業の理由は、単純にお金が欲しかったからだ。これを言うと批判を浴びることもあるが、「お金が欲しくて起業して何が悪い」って今でも僕は思っている。

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サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方

正田圭

本書は「会社を売却することを前提に起業をする」という斬新な働き方を提案します。「起業はハードルが高い」「会社を売るのはさらに難しい」と思われがちですが、「会社を作って売却するのは、世の中に数ある儲け話の中で、一番確実で、一番地に足の着...もっと読む

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a_tocci となりの鈴木さん家が八百屋を始めようが、豆腐屋をやっていようが、何もすごい話ではないだろう(当時のことはよくわからないが、教師になったとかのほうが、「すげぇ!」ってなったんじゃないだろうか)。 https://t.co/bopCtR3sA6 2年以上前 replyretweetfavorite

a_tocci 一昔前の、いわゆる昭和の時代は、日本人のほとんどが自営業者であった。そのため、起業したところで「ふーん」くらいの感じだった(はずだ)。 https://t.co/bopCtR3sA6 2年以上前 replyretweetfavorite

ikb 『他に誰もやる人がいないから、自分で業を起こすのが起業だ』 2年以上前 replyretweetfavorite