いまでこそ、日本国内でビットコイン取引所にアカウントを開設するときは、本人確認が必須となっていて(『今日からはじめるビットコイン入門』参照)、匿名性がだいぶ薄れてきましたが、もともとビットコインは仲間内だけで流通する遊びからスタートしているので、正体を隠したまま取引することもできました。
そのため、不正に取得したお金をクリーンなお金に変えるマネーロンダリングに利用されるのではないかという声が根強く、各国も法整備に追われているところです。
また、2016年4月に表面化した「パナマ文書」にあったように、企業や個人が租税回避のためにタックスヘイブンを利用するのを黙って見ているわけにもいかないため、国際送金について、国は監視の目を光らせています。
しかし、ビットコインで富を国外に移動すれば税金対策になるのではないか、と考える人はいるわけで、今後もいたちごっこが続くと思われます。
マネーロンダリングの手口
では、ビットコインを利用したマネーロンダリングは、実際にはどのように行われるのでしょうか。
2017年1月には、日本国内ではじめて、ビットコインを利用したマネーロンダリングの疑いで、日本人2人が追送検される事件が起きました。
他人名義のクレジットカードを使って不正に購入したビットコインを、日本国内で日本円に換金した疑いが持たれています。
残念ながら、これ以上手口を明らかにしてしまうと、犯罪者に利用されるおそれがあるので、詳細を記すことはできませんが、こういうケースが現実にあるからこそ、登録段階で犯罪歴がないかどうかなど、審査を厳密に行う必要があるのです。
そのため、後で述べるように、日本では2017年春から、ビットコインの事業者も金融機関並みに本人確認を徹底することが法律で義務づけられました(今後の連載で解説)。
トレーサビリティがしっかりしている
違法な取引、たとえばドラッグや武器、盗んだ貴金属や美術品などは闇マーケットで売るしかないので、たとえ高く売れるものであっても換金はしにくいという面があります。
一方、ビットコインをはじめとした仮想通貨は、デジタルで瞬時に動かせるので、送金に手間賃がかからないし、換金もすぐできます。だから、仮想通貨はマネーロンダリングで狙われやすいといわれているのですが、ここで思い出してほしいのは、ブロックチェーンにはすべての取引記録が残っているということです。
そのため、たとえば麻薬取引に関連したアカウントが一つ見つかると、税関などから取引所に照会が来るわけですが、こちらは一連の取引に関係した人物の名前を全部提供できる体制になっています。突破口さえ見つかれば、芋づる式に関係者が捕まる可能性が高いわけです。
仮想通貨は匿名性が高いからマネーロンダリングしやすいというウワサに飛びつく人が多いようですが、ブロックチェーンはトレーサビリティ(追跡可能性)がしっかりしていて、お金が移動した痕跡は後からいくらでもさかのぼることができるので、実は、不正なお金の移動には向いていないのです。
ビットコイン詐欺
マネーロンダリングとは違いますが、ビットコイン投資を騙った詐欺事件も起きています。「ビットコインに投資すれば確実に儲かる」と称して高齢者から資金を集めたものの、実際には投資せずに、集めた資金を流用したといったタイプの古典的な詐欺事件です。
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