東日本大震災から1年が経った2012年3月、NHKで被災者支援を目的とする音楽番組「〝明日へ〟コンサート」の放送が始まった。
総合司会を中居正広が担当し、SMAPも一出演者として歌を披露する。
人々の価値観を一変させた震災の記憶は音楽文化のあり方も問い直すものになったが、その中でSMAPは、アイドル歌手であるがゆえの一つの答えを見いだしていた。
「去年皆さんに言われてたことが、『歌の力って結構大きいんじゃないか』って。避難所にいらっしゃる被災者の方の声でも多かったんです、『歌が聴きたい』、『音楽が聞きたい』、『歌いに来てほしい』って」(稲垣)
「SMAPの曲って、人と人との繋がりを歌にしていたり、前向きなメッセージが込められていたり、笑顔や元気をあげるような内容が多いんですけど、覚えやすいことも含めて、すごくいい財産を僕らは持ってたんだなってことに、気づかされた」(稲垣)
国民的アイドルグループの歌声はそうして時代と寄り添いながら、震災後を生きる私たちの日々をもう一度作っていく。
震災の9か月後に発表したシングル『僕の半分』は当時の喪失感ともシンクロする切ないバラード曲だったが、その次の2012年4月に発売された『さかさまの空』は傷つきながらも前を向く、そんな明るさを持った楽曲へと変化している。
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