竹元正美
今上陛下の皇室外交に特徴はあるのでしょうか?
皇室外交を表す言葉に「大使一〇〇人分もの役割を有する」というものがあります。、「国際親善」という意味では、政治家や外交官が束になってもかなわないほどの重要な役割を果たしているからです。では、今上陛下の皇室外交にはどんな特徴があるのでしょうか?
今上陛下の外国ご訪問の何よりの特徴は、両陛下揃ってのご訪問が定着したことといえます。その訪問国は、立ち寄り国を含めると延べ一〇〇か国以上。来日中の外国要人とのご会見などを含め、日本人としてもっとも多くの外国要人とお会いになっています。そして、もう一つ、決して忘れてはならないのは、両陛下がどの国を訪れても、外国との友好親善関係を深められるほか、世界の平和に対して真摯な姿勢で向き合っていらっしゃることです。
今上陛下が「象徴としての務め」として、戦没者慰霊を強く自らに課していらっしゃいます。このことを「外国の戦地で命を落とし、帰国を果たせなかった日本人兵士の魂を慰める」ことだと思っている日本人は多いのではないでしょうか。しかし、今上陛下が心を向けていらっしゃるのは日本人戦死者だけではありません。戦争の犠牲となったすべての人の魂を慰めることを考えていらっしゃるのです。
また、海外に移住した日本人やその子孫に対しても深い思いをおもちになっています。日系人のいる諸国には、今上陛下自ら訪問するなどのお気持ちを寄せられてます。そのお気持ちは各皇族方も変わりありません。
そうした今上陛下の真摯なご姿勢と、対日感情を一変させた二つの外国ご訪問を紹介しましょう。
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この連載について
竹元正美
今上陛下の退位、眞子様のご婚約と話題に欠かない皇室。いま国民の関心は高まっています。しかしながら、わたしたちは皇室のことをどれだけ知っているのでしょうか? 外国人に皇室のことをきちんと説明できるのでしょうか? 本書は東宮侍従として皇室...もっと読む
著者プロフィール
昭和20(1945)年、長野市生まれ。早稲田大学法学部卒。昭和45年、外務省
入省。米国ドゥルー大学大学院修士号取得(国際関係論)。昭和61年、宮内庁
東宮侍従。皇太子・同妃両殿下のご訪米、礼宮殿下のブラジルご訪問にお供
した。平成2(1990)年、外務省儀典官として即位の礼に参列する外国人賓客
の受け入れ準備に当たる。タイ大使館公使及びスペイン大使館公使時代には、
天皇皇后両陛下の公式ご訪問をそれぞれ現地でお迎えした。ホンジュラス大使
時代の平成15(2003)年、紀宮殿下の同国ご訪問を現地でお迎えした。平成16
年、宮内庁式部副長。ウルグアイ大使時代の平成20年、高円宮妃殿下を現地
でお迎えした。平成23年、外務省退職。現在、一般社団法人「国際文化教育
協会」理事長。著書に『「米百俵」海を渡る』(日之出出版)、電子書籍の『我
は日本人なり』(オモイカネブックス)がある。