価値を与え続ける「ギバー」になれ。2020年のパラダイムシフト以降、生き残れる人間とは?

近い将来、お金が世の中から消えると唱える、事業創造家の山口揚平さん。山口さんが、投資や企業再生の仕事を突きつめ、経済の正体を10年以上研究した成果として、『新しい時代のお金の教科書』を上梓しました。
どうして、お金が必要なくなるのか。一人ひとりの評価や信頼が蓄積されていく「信用主義経済」について、じっくりお話を伺います。(聞き手:加藤貞顕)

“記帳主義経済”がもたらす、「個人>国家」の時代とは?

— 前回は、山口さんがベンチャー企業への投資や、事業の立ち上げのサポートをする中で見えてきた、お金の正体について聞きました。
 今後の世界では、お金そのものより、時間や信用が大事になってくるというお話でしたよね。

山口揚平(以下、山口) ええ、最終的にはお金はなくなっていきます。

— お金がなくなっていくというのは、ちょっとすごすぎて想像がつかないんですが、それはあとで伺うとして、いま流行っているビットコインなどの仮想通貨に置き換わるということでもないんですよね?

山口 仮想通貨を支える技術であるブロックチェーンは、これからも活躍すると思います。そしてさらにその先の段階でお金が必要なくなっていくんです。 『新しい時代のお金の教科書』の冒頭でも書きましたが、じつはいま流行っている、仮想通貨と同じしくみが、大昔にあったんです。


ブルーマーリンパートナーズ代表 山口揚平さん

— どういうことでしょう。

山口 お金の起源は、ミクロネシアの小さな島・ヤップ島にあった「フェイ」という大石です。そのころは持ち運びできるお金がなかったので、誰に何をもらって、何をあげたのかをその大石に刻んで記録していました。

— お互いの貸し借りを記帳していたと。

山口 そうです。価値交換の流れが一目で分かるようにしていたんです。これブロックチェーンみたいでしょう?

— 確かに。仮想通貨も、ブロックチェーンと呼ばれる台帳システムにすべての取引が記帳されることで、信用が担保されているんですよね。

山口 そうなんです。ブロックチェーン技術とは、世界中にある台帳の束(ブロック)を連ねる(チェーン)技術つまり、分散台帳です。そしてこれまでの社会では、お金以外のやり取りは「記憶」がベースになっていました。あのときあの人に何かをもらったとか、だれかに何かをしてもらったとか。私たちはそういうことを覚えていて、それに対してお返しをしたり、「あの人は信用のある人だ」などという評価をしてきました。
 しかし、これから数十年後に到来する未来では、そのすべのやり取りが「記録」されていきます。これまで「記憶」によって測られていた個人の信用が、「記録」に置き換わっていくのです。

— なるほど。

山口 いまって、お金の信用は、国が担っていますよね。そして、お金の刷りすぎによってその信用がゆらいでいる。そしてその代替物として、中央に管理されない仮想通貨がブロックチェーン技術によってつくられたんです。
 同じように、お金では個人の信用が測れなくなってきますから、一人ひとりのモノのやり取りを記帳することで、信用を可視化するようになるんです。

— それでお金持ちじゃなくても、たくさんの貸しがある人は、信用が高いことがひと目でわかるようになるんですね。

山口 そうです。そうやって世界中のやり取りがすべて台帳に記帳されるため、誰が誰にどの程度価値を提供したかがわかるようになり、信用がある人とない人が一目瞭然になるんです。

経済の中心が「お金」から「時間」へと変化する

— なるほど。この本ではそれを「記帳主義経済」と言ってますよね。そして、その後に「時間主義経済」が訪れると書いてあります。この「時間主義経済」ってなんなんですか?

山口 人々の欲求が「モノ(生存)」から「コト(承認)」へと変化すると、お金中心の経済が時間中心の経済へとシフトするんです。
 たとえば、どれだけお金を持っている大富豪であっても、大統領になるには時間をかけて社会からの信用を育まなければいけません。また裕福な家庭においても、子どもを正しく育てるためにはお金よりも時間が必要になります。自他の欲求を満たすために使うものが、お金ではなく、自らの時間になるということです。

— 時間が大事なのはわかりますが、時間主義経済というのは、時間が通貨のような価値の媒体になるってことですよね。ちょっとそこがぴんとこないんですよね。いろんな人の時給がいくらという形でわかって、時間を売れるようになるのでしょうか。でもそれだといまの労働市場でもそうですよね。

山口 「時間通貨」はもっと複雑になると思います。3時間の価値は、1時間の3倍かというと必ずしもそうではないですよね。どんなにえらい人でも、1秒ではなにもできません。この段階では価値がほとんどない。えらい政治家なら、1時間は無理でも半年あれば法案を通せるかもしれない。

— なるほど。

山口 時間通貨は、時間のかたまりの大きさなどによって価値が伸び縮みするんだと思います。それをうまく融資したり、買い取ったりする。例えば弁護士みたいな専門家がお金ではなく2000時間を融資するというようなことが行われるようになるわけです。

— なるほど。ちょっとまだ完全にわかったわけではないんですが、訪れる順番の話をするといまの「資本主義」に対して、モノで信用をやりとりする「記帳主義」、時間で承認をやりとりする「時間主義」が出てくるんですね。

山口 そうです。そして「記帳主義」と「時間主義」をあわせた「信用主義経済」が到来します。これまでの資本主義経済は、お金を使って現実社会を支配できる者が勝者となる「タテ社会」でした。しかし、これから個人間で直接やり取りを行い、信用を集める人が勝者になる「ヨコ社会」になります。そこでは、お金はたいした価値を持たなくなるのです。

与え続ける人だけが成功する、「信用主義経済」の全貌
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お金の正体を知れば、もっと自由になれる—山口揚平インタビュー

山口揚平

近い将来、お金が世の中から消えると唱える、事業創造家の山口揚平さん。山口さんが、投資や企業再生の仕事を突きつめ、経済の正体を10年以上研究した成果として、『新しい時代のお金の教科書』を上梓しました。 どうして、お金が必要なくなるのか。...もっと読む

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yamaguchiyohei ケイクスの加藤さんとの対談です。ご覧ください https://t.co/6VsnLl31iZ 3年弱前 replyretweetfavorite