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『専業主婦は2億円損をする』(マガジンハウス)
転職しなければ“天職”には出合えない
就活のとき、「自分に向いた仕事をどうやって見つければいいかわからない」と悩むかもしれません。わたしのアドバイスは、「とりあえず就職して、向いてないと思ったら転職する」というものです。
かつては「新卒で正社員になれなければ人生終了」みたいな雰囲気がありましたが、もはやそんなことはありません。20代、あるいは30代半ばまでの転職はふつうで、そのうえ人手不足が追い風になっています。いまや大企業でも中途採用を受け入れないと必要な人材を集めることができないのです。
アメリカの調査では、「社会人になって早い時期に頻繁に転職する人は、キャリア最盛期に高賃金、高収入を得ている傾向がある」ことがわかっています。しかし考えてみれば、「転職しなければ適職に出合えない」というのは当たり前の話です。
日本では新卒で入った会社で定年まではたらきつづけるのが常識でしたが、その仕事が適職であるためには2つの条件を満たさなければなりません。ひとつは就活を始める大学3年生のときに、「やりたい仕事はなにか」を正確に理解していること。ふたつめは、その仕事ができる会社に採用されることです。
このように考えれば、「新卒で適職に出合える」のが宝くじに当たる以上にむずかしい理由がわかります。すなわち「ほとんどの就活は“失敗”」なのです。
それに対して、転職を繰り返せば自分に向いた仕事に出合う確率が上がり、スペシャリストとしての経験値も高くなっていきます。これもアメリカの調査ですが、15年以上のキャリアがある管理職で、転職2回のひとが役員になる確率は2%ですが、転職が5回以上だと18%に上がるそうです。転職は“天職”へとつながっているのです。
日本の若者に失業者はいない?
いまや「新卒一括採用」「年功序列」「終身雇用」という日本人のはたらき方が機能不全を起こしていることは明らかです。
日本人の労働生産性(仕事で利益を稼ぐちから)はOECD34カ国中21位、先進7カ国のなかではずっと最下位です。日本のサラリーマンは過労死するほどはたらいていますが、一人あたりの労働者が生み出す富(付加価値)は7万2994ドル(約800万円)で、アメリカの労働者(11万2817ドル/約1280万円)の7割以下しかありません(2014年)。これは、日本人の能力がアメリカ人より3割も劣っているか、そうでなければ「はたらき方」の仕組みがまちがっているのです。
しかしその一方で、日本的な労働慣行にもいいところはあります。それは、若者の失業率が低いことです。
少子化の影響がはっきりしてきたことで、いまや新卒の就職率は98%になりました。大学を出たらほぼ全員が仕事に就けるような国は、先進国のなかでは日本くらいしかありません。15~24歳の失業率はスペインで53・2%、イタリアが35・3%、フランスでも23・8%もあり(2015年)、ドロップアウトしたまま社会復帰できない若者たちが大きな社会問題になっています。そんな国と比べれば、日本の若者はものすごく恵まれています。
大学時代に自分の進むべき道を決めているのなら、クリエイターを目指したり、資格試験を受けたり、ベンチャー企業に就職すればいいでしょう。しかしほとんどのひとは、「なにが自分に向いているかわからない」というのが本音ではないでしょうか。
そんなあなたには、日本の会社はけっこう役に立ちます。
海外では大学時代に専門的なスキルを身につけるのが当然で、日本でも専門化した学校が増えてきましたが、文系学部を中心にモラトリアムのためといわれてもしかたのないところもたくさんあります。日本の会社がそれを容認しているのは、入社後に“会社仕様”の人材を養成すればいいと考えているからです。仕事をするなかでスキルを身につけるのがOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)です。——こうした慣行も徐々に変わりつつあるようですが。
とはいえ会社の人事部も、新卒社員がどの仕事に向いているかちゃんと見分けられるわけではありません。そこで最初の1、2年は社内のいろいろな仕事をさせてみて適性を知ろうとします。これが、「適職さがし」にぴったりなのです。
新卒で入った会社で「好き」な仕事が見つかればラッキーだし、見つからなければ転職してやり直せばいいだけです。会社のなかで「好き」を追求してもいいし、もっと活躍できると思えば、転職して新しい職場で能力を試してみるのもいいでしょう。
これが、「とりあえず就職して、向いてないと思ったら転職する」戦略です。
自分のスペシャルを見つけて生涯はたらく
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