あたらしい働き方と生き方 『専業主婦は2億円損をする』(マガジンハウス)
「安定」と「やりがい」のどちらをとるか
女子高生に「なりたい仕事」を聞くと、1位が公務員で、その次にアニメやマンガ関係の仕事が来ます。これは、わたしたちが仕事になにを求めているかをとてもよく表わしています。それは、「安定」と「やりがい」です。
むずかしいのは、このふたつが両立しないことです。
安定した仕事は定年まで確実に収入を得られますが、その額は最初からほぼ決まっています(ローリスク・ローリターン)。
やりがいのある仕事は信じられないような富と名声を手にできるかもしれませんが、ほとんどのひとは失敗します(ハイリスク・ハイリターン)。
「安定していて、やりがいもある仕事」をだれもが望むでしょうが、「ローリスク・ハイリターン」のそんな仕事があったとしても、そこにはたくさんのひとが殺到するので競争率はものすごく高くなるでしょう。
公務員というのは、政策の立案にかかわる一部のひとを除けば、典型的なバックオフィスの仕事です。民主的な社会では、なにをするかは選挙で選ばれた政治家が議会で話し合って決めることになっています。公務員の役割は議会で決まったことをきちんと実行することで、その結果がうまくいかなくても、責任をとるのは政府や政治家です。
公務員の魅力は、60歳の定年までよほどのことがなければはたらきつづけることができ、年金もしっかりもらえることです(年金の支給年齢が引き上げられたことで、65歳まで定年を延長することも検討されています)。日本政府が「女性が活躍できる社会」を掲げていますから、職場は原則として男女平等で、育休もしっかり取得できます。これからは女性の管理職も増えていくでしょう。
そう考えれば、仕事に安定を求める女性にとって、公務員はきわめて魅力的な職場です。不安があるとすれば日本国の財政が破綻寸前なことで、今後、公務員の数は減らされていきますから競争率が高くなり、給与が減額される一方で仕事がどんどん忙しくなっていくことでしょうか。
それに対して、ハイリスク・ハイリターンの仕事はどうなっているのでしょうか。
最近では20代でクリエイターとして成功したり、学生仲間とゲームやアプリのベンチャー企業を立ち上げて、数十億円、数百億円で大企業に売却したりすることも珍しくなくなりました。アメリカのシリコンバレーとは比較になりませんが、グローバル化と知識社会化(ハイテク化)によって、日本でも野心と才能のある若者がかつてよりずっと成功しやすくなったのはまちがいありません。クリエイターにとって、やりがいのある仕事をするチャンスがどんどん広がっています。
サラリーマンは幸福度が決定的に低い
公務員とクリエイターの魅力が上がっているとしたら、サラリーマンはどうでしょう。
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