新しい働き方がわかる!
『専業主婦は2億円損をする』(マガジンハウス)
責任とやりがいと、収入の関係
前回は、クリエイター、スペシャリスト、マックジョブの3種類の仕事について、説明しました。
もう一度、図を載せます。
スペシャリストとマックジョブ(バックオフィス)はどちらも「拡張性のない仕事」ですが、このふたつはなにがちがうのでしょう。それは、責任の所在です。
外科医が手術に失敗して患者が死亡すればきびしく批判され、場合によって医療過誤で訴えられるかもしれません。弁護士が裁判に負ければ依頼者は納得せず、関係がこじれると弁護士会に懲戒請求されることもあります。スペシャリストの仕事は、高い収入と大きな責任がセットになっています。
それに対してマクドナルドの仕事は詳細なマニュアルが決められていて、手順どおりに仕事をすれば、たとえ事故が起きてもアルバイトが責められることはありません(責任は不適切なマニュアルをつくった会社にあります)。これはバックオフィスの仕事も同じで、求められるのは決められた作業を正確に行なうことで、創造性や独創性は必要とされず、個人が勝手な判断をすることは許されません。そして、やはりマニュアルどおりにやっていれば、不都合なことが起きても責任を問われません。
ここまでをまとめてみましょう。
1 マックジョブはマニュアル化された拡張不可能な仕事で、達成感はないが責任もない
2 スペシャリストは、クリエイティブクラスのなかで拡張不可能な仕事に従事するひとたちで、大きな責任を担うかわりに平均して高い収入を期待できる
3 クリエイターはクリエイティブクラスのなかで拡張可能な仕事に挑戦するひとたちで、いちど大当たりすれば信じられないような富を手にすることができるが、ほとんどは名前を知られないまま消えていく
これは、どれがよくてどれが悪いという話ではありません。若いあなたならクリエイターに魅力を感じるでしょうが、夢をかなえられるのはごく一部だけです。スペシャリストの仕事は高給で安定していますが、重い責任と強いプレッシャーに耐えなくてはなりません。マックジョブでは大金は稼げませんが、マニュアルどおりやっていれば責任はなく、職場の人間関係で悩むこともありません。
ひとびとのはたらき方は、仕事を「労働とみなす」「キャリアとみなす」「天職とみなす」のいずれかに当てはまるといいます。これは、マックジョブ(バックオフィス)、スペシャリスト、クリエイターの分類にぴったり当てはまります。
「労働とみなす」ひとたちは、仕事を生計を立てるための必要悪と考えています。彼らがはたらくのは、家族とのだんらんや趣味など、仕事以外の時間を楽しむためです。
「キャリアとみなす」ひとたちは、仕事を通じて自分を成長させたいと考えています。仕事と人生を一体化しようとまでは考えませんが、より多くの収入や社会的な評判を得たいという野心を持ち、多くの時間とエネルギーをキャリアアップに注ぎ込みます。
「天職とみなす」ひとたちは、仕事に充実感や社会的意義を見出し、金銭的な見返りや出世のためではなく、楽しいからはたらいています。彼らは仕事と人生を切り離すことができず、生涯現役で死ぬまで働きつづけるのを当然と考えるでしょう。そしてこれが、「自己実現」と呼ばれるのです。
ちなみにAI(人工知能)の急速な進歩によって、マックジョブ(バックオフィス)の仕事の多くはいずれロボットに代替されるといわれています。「自己実現できる仕事しか稼げない」時代がくるかもしれません。
日本のサラリーマンは特殊な存在
ここまで読んで、「だったらサラリーマンはどこにはいるの?」とあなたは思うかもしれません。
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