日本語のおもしろさを知りたいあなたへ
『チョコレート語訳 みだれ髪』俵万智、与謝野晶子
(河出書房新社)初出1998
言葉は誤解なく伝わればそれでよろしい VS 言葉には手触りってものがあるのよ
明治時代の与謝野晶子の歌を、俵万智が現代語訳! 明日から自分の口からこぼれる言葉を大切に選びたくなる一冊。#明治時代の歌集を俵万智が現代語訳 #五七五七七の形式を崩さない現代語訳すごい! #歌人・与謝野晶子の処女作 #晶子と鉄幹の恋情とスキャンダルが背景 #短歌に興味ない人でもおもしろい歌集 #古典の勉強にもなる #乙女心をくすぐられたいときに読みたい一冊
日本語ってすごいよなぁ。—母語であることを忘れ、他人事のようにそう思う瞬間がある。
たとえば、こんな言葉を読んだとき。
みだれ髪を京の島田にかへし朝ふしてゐませの君ゆりおこす
朝シャンにブローした髪を見せたくて寝ぼけまなこの君ゆりおこす
ひとつ目が与謝野晶子の歌、ふたつ目が俵万智訳である。
『みだれ髪 チョコレート語訳』という本は、与謝野晶子の『みだれ髪』に載る歌と、それを俵万智が訳した「チョコレート語訳」バージョンを載せる、という構成で成り立っている。
このチョコレート語訳というのがとても素敵で、ちゃんと五七五七七のリズムを崩さずに、それでいて現代語訳として読んで楽しい表現になっているのだ。
たとえば、さっき載せたふたつの短歌を読んでほしい。
俵万智の一級品の言語センスで与謝野晶子をラッピングした一冊
「みだれ髪を京の島田にかへし朝」……この言葉だけを読むと、島田って未婚の女の人に流行ってた髪型だったよねたしか、とか、この歌集のタイトルってこの歌から来てんのかな、とか、ぼんやり頭の中で注釈をつけてしまう。
だけど、俵万智の魔法によって「朝シャンにブローした髪を見せたくて」と鮮やかに現代語訳されると……与謝野晶子自身の風景から、私たちの実感にぐっと迫った風景に近づいてくる。
朝の風景。それもたぶん初めてその人と