不倫の歌、朝シャンの風景……俵万智が『みだれ髪』を訳したら?

京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う名著を選んでみた。36作目は、俵万智、与謝野晶子の『チョコレート語訳 みだれ髪』。次の2つは同じ歌です。「みだれ髪を京の島田にかへし朝ふしてゐませの君ゆりおこす」「朝シャンにブローした髪を見せたくて寝ぼけまなこの君ゆりおこす」【3刷出来!】『人生を狂わす名著50』より特別連載。作家、有川浩も推薦! →公開は毎週木・金です。

日本語のおもしろさを知りたいあなたへ

『チョコレート語訳 みだれ髪』俵万智、与謝野晶子
(河出書房新社)初出1998

言葉は誤解なく伝わればそれでよろしい VS 言葉には手触りってものがあるのよ

明治時代の与謝野晶子の歌を、俵万智が現代語訳! 明日から自分の口からこぼれる言葉を大切に選びたくなる一冊。#明治時代の歌集を俵万智が現代語訳 #五七五七七の形式を崩さない現代語訳すごい! #歌人・与謝野晶子の処女作 #晶子と鉄幹の恋情とスキャンダルが背景 #短歌に興味ない人でもおもしろい歌集 #古典の勉強にもなる #乙女心をくすぐられたいときに読みたい一冊


 日本語ってすごいよなぁ。—母語であることを忘れ、他人事のようにそう思う瞬間がある。
 たとえば、こんな言葉を読んだとき。

みだれ髪を京の島田にかへし朝ふしてゐませの君ゆりおこす
朝シャンにブローした髪を見せたくて寝ぼけまなこの君ゆりおこす

 ひとつ目が与謝野晶子の歌、ふたつ目が俵万智訳である。
『みだれ髪 チョコレート語訳』という本は、与謝野晶子の『みだれ髪』に載る歌と、それを俵万智が訳した「チョコレート語訳」バージョンを載せる、という構成で成り立っている。
 このチョコレート語訳というのがとても素敵で、ちゃんと五七五七七のリズムを崩さずに、それでいて現代語訳として読んで楽しい表現になっているのだ。
 たとえば、さっき載せたふたつの短歌を読んでほしい。

俵万智の一級品の言語センスで与謝野晶子をラッピングした一冊

「みだれ髪を京の島田にかへし朝」……この言葉だけを読むと、島田って未婚の女の人に流行ってた髪型だったよねたしか、とか、この歌集のタイトルってこの歌から来てんのかな、とか、ぼんやり頭の中で注釈をつけてしまう。
 だけど、俵万智の魔法によって「朝シャンにブローした髪を見せたくて」と鮮やかに現代語訳されると……与謝野晶子自身の風景から、私たちの実感にぐっと迫った風景に近づいてくる。
 朝の風景。それもたぶん初めてその人と

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三宅香帆

人気連載【京大院生が選んだ「人生を狂わす」名著50】がリニューアルして再スタート! 書籍『人生を狂わす名著50』の著者であり、現役の京大院生で文学を研究し続ける24歳の三宅香帆が、食べて、咀嚼して、吐いた本の中身を紹介するブックガイドです。

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コメント

chitosenagao 読んでみたい!→ 9ヶ月前 replyretweetfavorite

ikb これは、すばらしい。 そう。短歌って、「いま、こ… https://t.co/Bo4KifacM6 9ヶ月前 replyretweetfavorite

mamesuke0212 三宅香帆 @m3_myk |京大院生が選んだ「人生を狂わす」名著50 https://t.co/eevvBS9x6V その子二十(はたち)櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな(与謝野晶子) 二十歳とはロングヘアーをなびかせて畏れを知らぬ春のヴィーナス(俵万智) 9ヶ月前 replyretweetfavorite