鬼より怖いあの人の"洗礼"
ぼくの若手時代、野球界はいまよりずっと厳しかった。特に当時のドラゴンズの監督は、鬼より怖い星野仙一さん。チームメイトの中では立浪和義さんくらいだろう、星野さんの強烈な洗礼を浴びなかったのは。
もちろんぼくも、星野さんにこってり絞られた経験には事欠かない。その中でも思い出すのはプロ入り5年目、1988年春のキャンプでのことだ。
あのころのぼくは、「今年ダメならクビだ」という強い危機感を抱いていた。それはそうだ。過去4年で一軍公式戦のマウンドに立ったのはわずか4度、それも投げれば打たれの繰り返しで通算防御率は19点台という信じられない数字だった。こんな投手に、よくもまあ5年目のチャンスが与えられたものだと我ながら思う。
さて、背水の陣で臨んだキャンプでぼくは死ぬほどがんばった。そのご褒美だったのだろうか、星野さんはオープン戦の開幕投手にぼくを指名してくれた。
「ここでやらなきゃいつやる!!」
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