FOK46—フォークオーケン46歳
【第17回】H氏の店にて

FOK46のライブを終えて、夜の江古田をさまようオーケン。ふと思い立って、二十数年来の友人であるH氏が経営するレゲエバーに行き、H氏との再会を試みます。特に連絡をしたわけではないのでH氏はなかなか現れず、それでも料理が美味しいからいいかとひとり酒をしていると、ケータイに突如としてメールが届いて……。エディこと三柴理氏も登場の第17回です。

 永島浩之さんとのライブを終えた僕は、ギブソンJ50の入ったギグケースを背負って、夜の江古田をさまよった。
「おかしいな、確かこのあたりにH氏の店があるはずなんだが…」
 古い友人であるH氏の経営しているバーが江古田にあると聞いていた。

 友人は元々はベーシストで、20歳くらいの頃、同じバンドで何度かライブをやったことがある。フレットレスベースをブイブイいわせる、技巧派であった。「うまい! きっと彼はプロミュージシャンとして表舞台でやっていくのだろうな」と思ったものだ。 
 ところが、あまり表に出たくない性分であったようで、友人がCDを作ると言えば喜んで手伝うが、ライブには出ない、それでも誘うとプッツリ連絡がとれなくなる…といったようなことが何度かあり、ミュージシャンとしての彼を見る機会は徐々に減っていった。

 人はミュージシャンと聞くと、その人生のモチベはプロになって売れてやがて武道館や東京ドームのステージで脚光をあびて…などと考えがちだけれど、意外にそんなこともないのだ。そういう夢を持つ人ももちろんたくさんいるけれど、モチベも夢も人それぞれなものである。
 H氏は飲食店の経営を始め、商才があったのだろう、何店かのオーナーとなり、現在は江古田でもレゲエを聴かせるバーを持っている。それがH氏にとっては適したモチベーション、音楽との接し方だったということであったのかもしれない。
 そして、二十数年の歳月を経て今、僕は40代の弾き語り初心者として彼の店を訪れようとしているのだ。

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小説 FOK46—フォークオーケン46歳

大槻ケンヂ

30年以上音楽活動を続けてきた、ロックミュージシャンの大槻ケンヂ。楽器演奏と歌を歌うのを同時にできないという理由で、ボーカルに徹してきた彼が、2012年、ギターの弾き語りでのソロツアーを始めた。その名も『FOK46(フォークオーケン4...もっと読む

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