いざ、対決!

【第45回】
幼い少女を救出するため美術館に潜入した一行。
彩子のサイコメトリーで監禁場所への経路がわかったが、扉の前には凶暴そうな大男が……。
小説すばる新人賞作家・行成薫が描く、先読み不能の「超能力」エンターテインメント!


「アイツ、カードキーを持ってるよな」

「持ってるね。ぶら下げてる。でも、超強そう」

 菜々美が、ヤバいよね? と、今村に同意を求めた。今村は、激しく頷き、奪い取るなどという芸当は無理だ、とアピールをした。

「俺のパラライズなら、動きを止められる」

「マジですか」

「でも、一度見せちまってるからな。手の内はバレてる。警戒されたら、厳しいかもしれない」

 金田のパラライズは、両手で相手の体を摑む必要があるのだという。タイミングがずれてしまえば、失敗だ。今村と同じように、能力は一日一回しか使えない。そうなったら、あの大男と対決できるような、すごい超能力を持った人間はいない。

「亜希子さん」

「は、はい」

「あの、灰皿のタバコって、燃やせますかね」

 金田が、扉の隙間から、男の傍らに置かれている灰皿を指さす。男は、かなりのヘビースモーカーらしく、一本目を吸い終わり、灰皿でもみ消しながら、二本目に火をつけている。灰皿には、吸い殻が山盛りになっているのが見て取れた。

「一度、夫のタバコを燃やしてしまったことがありますから、燃やせるとは思います」

「じゃあ、灰皿が突然炎上して、アイツが気を取られてる間に、俺が後ろから摑み掛かる」

 今村は、股間がぎゅっと縮みあがるのを感じた。金田は、こともなげに言ってのけるが、失敗すれば、ただでは済まない。相手は、暴力を振るったり、子供を平気で誘拐したりするような人間たちなのだ。

「いくらなんでも、危険すぎますよ」

「しょうがねえだろう。他に、あの扉開ける方法あるか?」

「でも、金田さんにだけ、そんな」

 今村が渋っていると、その恐怖感が伝染したのか、彩子や亜希子も、危険すぎる、という言葉を口にした。

「いいか、あの扉の向こうに、きっと誘拐された女の子がいる」

「それは、そうだと思いますけど」

「三か月だぞ? 小さな女の子が、お母さんから引き離されて、どれだけ怖い思いをしているか。研究所だかなんだか知らねえが、そんな理不尽が許されていいと思うか?」

「そりゃ、思わないから、こうやって来てるわけですけど」

「アイツがいる以上、アイツをどうにかしねえと、先には進めねえ。じゃあ、誰がアイツをなんとかするんだ?」

 俺だ。

 金田は、全員の目を見回しながら、ゆっくりと、静かに言い切った。

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行成薫

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