立派な経営者はけっしてあきらめたりしない」次なる試練!返品問題

新刊の『外国人にも伝えたい日本の文化』の注文販売が増えて、新刊は売れ行き好調。追加注文も発生し、森下書房の銀行への借金を返済するメドが立ってきた。しかし、大喜びの美鈴に御園が告げた「悪い知らせ」とは……。―― 平凡な女子高生が、青春を賭けて、倒産寸前の出版社立て直しに挑む。「出版業界」のリアルを描き出しながら、必須のビジネス教養も一気に学べる、疾走感満載のビジネス小説、第15回!

またキャッシュが減る?

「もうっ! いったいどうしたらいいの!」

美鈴の喚き声に、眠っていた猫が体をびくつかせ、警戒心に満ちた目で美鈴を見た。そして、おもむろに立ち上がり、店の奥へと消えていった。不穏な空気を察したのだろう。

それでも、石島はいつもと変わらず冷静で、顔色ひとつ変えなかった。

「美鈴社長、どうされましたか? さっきからこの世の終わりみたいな表情をされていますが……」

美鈴は会社帰り、久しぶりに「三毛猫茶房」に立ち寄った。御園の報告があまりにショックで、まっすぐ家に帰る気にならなかったということもあるが、正直にいうと、石島の知恵を借りたかった。

「会社の立て直しがうまくいっていない様子ですね」

石島は飲み物を差し出した。

「はっ? 注文してないよ。しかも、奇妙なくらいに緑色なんですけど」

「メロンソーダにアイスクリームを浮かべた、当店の人気商品です。煮詰まっているときは、甘いものがいちばんです」

「むしろ頭がおかしくなりそうな色しているけど……」

そういって、美鈴はおそるおそるストローに口をつけた。

「メロンの味、全然しない!」

「それはいわない約束です。四の五のいわずクリームソーダを味わうのが大人のたしなみというものですよ」

「なにそれ……でも、意外といけるかも。アイスが載っかっているのも、お得な感じがするし」

少し落ち着きを取り戻した美鈴は、事の顛末を石島に説明し始めた。

「お金の時間価値」の大切さを実感し、翌月に支払いがある注文販売をとる作戦を立てたこと。それが見事に成功した森下書房は、当面の資金繰りが改善し、経営危機を脱することに成功したこと。ところが、喜んだのも束の間、ミソじいから悪い報告があったこと……。

その日、御園から告げられた内容をかいつまんでいうと、こういうことだ。

新刊の『外国人にも伝えたい日本の文化』の注文販売が増えて、売れ行き好調により、銀行への借金を返済するメドが立った。当面は倒産の窮地を脱することはできたのだが、新たな問題が発生したという。

返品の問題である。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

倒産寸前! がけっぷちの出版社を救ったのは、女子高生の勇気と「ファイナンス」だった!

この連載について

初回を読む
女子高生社長、ファイナンスを学ぶ

石野雄一

小さな出版社の社長だった父の突然の訃報。 あとを継ぎ、社長に就任した女子高生の美鈴。 しかし会社は倒産寸前。銀行への返済期限は3ヵ月。 「出版不況」「返品の山」「使えない編集者」。 次々と難題が襲い掛かる。途方に暮れる彼女の前に 現れ...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません