この本を売りたい」女子高生社長、決意の新刊注文書

「私はこの本を売りたい」青島ブックストアの書店員・雨宮から“書店のホンネ”を聞き、打ちのめされていた美鈴。その悔しい気持ちが、美鈴の決意をあらたにさせた。どうすれば本を注文してもらえる? 美鈴が出した結論とは。―― 平凡な女子高生が、青春を賭けて、倒産寸前の出版社立て直しに挑む。必須のビジネス教養が一気に学べる、ビジネス小説、第13回!お正月集中連載!

徹夜の新刊注文書

「おはようございます!」

翌日、営業部の朝礼が終わると、美鈴が晴れ晴れとした笑顔で登場した。

そして「ジャーン」といって、1枚の用紙を高く掲げた。

「8月の注文書をつくり直しました。今日からこれをもって書店をまわってください。FAXも新しい注文書でもう一度送信しましょう」

新刊注文書は、美鈴が徹夜で仕上げたものだった。

パソコンの使えない美鈴はすべて手書きで注文書を作成していた。それは『外国人にも伝えたい日本の文化』を熟読した美鈴だからこそつくれる、同書をメインにした注文書だった。

多くの日本人が外国人に聞かれてもうまく答えられない「日本文化に関するあるあるの疑問」を並べて、「本書を読めば、外国人に説明したくなるくらい日本の文化にくわしくなれます」とキャッチコピーを打った。そして、編集担当者にこの本を企画した思いやセールスポイントをLINEで聞いて、そのコメントも注文書に記載していた。

それを見て感嘆の声を上げたのは、営業部でいちばんの若手社員・榎本光一(えのもとこういち)だ。

「美鈴社長、この注文書、すごくいいですね。全部手書きだから目につきますし、この本を売りたいという気持ちが伝わってきます。『外国人にも伝えたい日本の文化』って正直、地味なテーマだなあと思っていたんですが、こんなに面白そうな内容なんですね」

「ありがとう。ところで、営業部のみんなは事前に本の内容を読まないで営業しているの?」

「興味のあるものは読みますが、正直、読んでない本もあります」

声が小さくなっていく榎本。

「これからは自社の本は必ず読んでね。自分が読んでない本を『いい本だから書店に置いてください』とお願いするのは、おかしいと思うの。自分がいいと思うから、自信をもって人に勧められるんじゃないかな。書店員さんもプライドをもって仕事をしているから、多くの人に届けたいという想いが伝わってくる新刊は、書店員さんも放っておかないと思うよ」

バツが悪そうにしている榎本の向こうで、営業部長の早瀬は「雨宮店長の受け売りじゃないか」と苦笑いしていた。


祝! 異例の発売前重版!

夕方、美鈴は社長室で決算書の入門書を開いたまま眠りに落ちていた。徹夜が響いたようだ。

「美鈴社長、たいへんです!」

社長室にあわてて入ってきたのは、営業部長の早瀬。寝ぼけまなこのまま、美鈴は顔を上げた。おでこには本のあとがくっきりと残っている。

「どうしたの?」


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