東京は自分の居場所だと思いたい、思えないあなたへ
『東京を生きる』雨宮まみ
(大和書房)初出2015
街の欲望 VS 私だけの欲望
地方出身者である作者が「東京」への欲望を語る一冊。私はこれを読んで東京に住みたくなくなった。あなたはどうだろうか?#エッセイ #「東京」についての随想 #上京経験者必見 #お金・美・健康……様々な角度からの「東京」 #地方出身なら「わかる!」と思う箇所があるはず #「東京の人になりたかった」というあなたにも #繊細な文章が好きな人ぜひ #東京に行く前に読みたい一冊
東京が怖い、と言うと笑われることがある。
おおげさな、とか、案外住んでみれば慣れるよ、とかみんな笑って言ってくれる。実際住めば都という言葉もあるし、きっと住んでみれば怖くなくなるのだろう。
東京なんてただの地名だ。そこでどんな人と関わるかは、東京という場所に依存せず、ただの私に寄るのだとも思う。
でも、私は、怖い。「東京」が。初めて東京に行ったときからずっと。
だから私は、東京に住みたくない。
東京へ行くまでもなく、人生を変えられてしまう一冊
—ああ、そうだ、これ、これが怖いんだ。
『東京を生きる』を読んだとき、驚いた。
この本には「東京怖い」の正体が詰まっている。そうだよ東京のこれが怖いんだよ、と心底思う。ぼんやりと歪んで見えていた東京が、この本には驚くほど文章として濃縮されていた。
『東京を生きる』は、作者の雨宮まみさんが地方から上京してきた経験をもとに東京という場所について随想を綴ったエッセイ集だ。
「お金」「欲情」「美しさ」「タクシー」「殻」「泡」「血と肉」……目次のタイトルを見るだけで声が漏れる。雨宮さんの繊細な文章に、東京という都市の孕む欲望だったり圧力だったり幻想だったり、そういうものがあますことなくすくい取られる。