ガルパン道ノススメ

ケリーズ・ヒーローズ&パンツァー(後)

ガルパンがもっともっと面白くなる短期集中連載、第五回は前回から引き続き映画「戦略大作戦」をご紹介します。

■名優と名声優たち

 つづいて、主要登場人物について。合わせて、吹替にも触れていく。役名は字幕ではなく、吹替のもの。あだ名はあだ名として区別しやすいよう、〈 〉に入れた。横には原語を付してある。( )内は筆者の補足。

●ケリー二等兵 Private Kelly

  所属:米軍・州兵陸軍(Army National Guard)第35歩兵師団

 主役を演じる山田康雄……じゃなかった、クリント・イーストウッドは、苦みばしったニ枚目ぶりがまだ若々しく、かっこよくて渋い。山田康雄の声も、ダーティハリーほどハードではなく、ルパンほどはっちゃけることもなく、抑制を効かせつつ、ほどよくユーモアを含んで、これまたみごと。山田イーストウッドのイメージがすっかり染みついているせいか、日本語版でカットされたシーンで吹替が英語に切り替わっても、あまり違和感がない。山田康雄、英語うまいなあ、みたいな(笑)。

 そういえば、原語ではクリント・イーストウッドが号令をかけているのに、声が聞こえない場面が一カ所あり、そこで山田康雄がしっかりと、「ようし! いくぞ!」と怒鳴っている。ここは突撃の号令があったほうがわかりやすい場面なので、日本語版で適切に補われたといえる。

 なぜ号令が消えているのかは、なんらかの配慮が働いたのかもしれないが、エラーの可能性もある。というのは、この映画、けっこうな数のエラーが指摘されているからである。いわく、金の勘定がいろいろと合っていない、なんでジェット機が飛ぶ音が入ってるの、酒瓶の形が途中で変わっている、スタッフが画面に映っている、ティーガーは3輌のはずだが、4輌いないと説明がつかない……等々。劇場公開版(144分)は本来の形より20分ほどカットされていて、それによる不整合もあるようだ。このあたりは、CINEMA RETRO の Movie Classics Special Issue #3、Kelly's Heroes 特集号にくわしい。IMDb(インターネット・ムービー・データベース)にある Trivia のページにも、この冊子の内容がかなり拾われている。ついでながら、写真が豊富なのは、The Clint Eastwood Archive の『戦略大作戦』関連ページ

 なお、ケリーが降格されたあとの階級 private は、一等兵を指す場合もあるが、映画では階級章がついていないので、二等兵でOK。袖につけている青地に白十字のマークは、州兵陸軍第35歩兵師団のもの(州兵 Army National Guardは、戦時には米連邦軍に組みこまれる決まりで、第二次大戦にも参加していた。原語は一般に「陸軍州兵」と訳されるが、ここだけ抜きだすと、「陸軍に所属する州兵」──常日ごろから米連邦軍・陸軍に所属する組織のように見えてしまうので、ここでは「州兵陸軍」(州兵における陸軍)の訳語を採った)。

●〈ビッグ・ジョー〉曹長 Master Sergeant "Big Joe"

  所属:同上

 テリー・サバラスの役柄には、『刑事コジャック』(1973~1978)のコジャックのようにどっしり構えたボスタイプと、ぎゃんぎゃん喚きちらすおっさんタイプが多い。この映画で演じている荒くれタイプには、大平透の声がじつによく似合う。冒頭、味方を誤射する砲兵隊の隊長に向かって、「第三地区じゃねえ、第四地区だ、第四地区におれたちゃ二時間もいるんだ、第三地区じゃねえってば、第四地区だよぉ!」と無線でがなりまくるシーンには、文章で見るとなんの変哲もないが、神がかったインパクトがあり、ここだけでもう物語に引きこまれてしまう。そういえばテリー・サバラスは、ガルパンのもうひとつの大きな元ネタ、映画『バルジ大作戦』でも似たようなタイプの戦車長を演じていた。NET(現テレビ朝日)の日曜洋画劇場版ではこちらも大平透が声をあてていて、やっぱり最高!

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中村融 /酒井昭伸

12月25日発売のSFマガジン2月号では、「最終章 第1話」が絶賛上映中の「ガールズ&パンツァー」を特集しています。これを記念して、本特集の監修を務めた翻訳家・酒井昭伸氏による特別コンテンツをおおくりします。

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