前回、収益を目的としない個人メディアが取り得る言論について、3つのポジションを提示しました。そして、「"野次馬の対象"のポジションを取るためには、尋常ではない精神的タフネスが必要になるので、それ以外のポジションの可能性を考えましょう」というところで話を終えました。
簡単に結論を出してしまいましたが、実は今の構造のインターネット世界において、この"野次馬の対象"的なポジションを取ることは、メディアとして成功するための必要条件になっています。「どんな極論、どんな下品なネタでも、とにかくたくさんのPV(ページビュー、アクセス数)を集めた奴が勝ちである」というのは、グーグルによって生み出された今のインターネットの普遍的なルールです。そのことは、つい最近もモバツイ開発者の藤川真一さんが、「残念なweb論の骨子」というエントリにまとめておられましたのでご参考まで。
したがい、前回のコラムで紹介したイケダハヤト氏も言うように、「自分の恥の部分をさらけ出し」、「一部の人たちから嫌われ」るポジションを取ってでも、大量のPVを集めることが、個人メディアとしての経済的成功の条件です。しかし、このポジションを取ることは、普通の企業で被雇用者として勤務している人間には、まず無理です。下手すると勤務先のレピュテーション(評判)そのものを傷つけ、解雇対象になりかねません。
賢明なサラリーマンでありたいのであれば、インターネットでは「何も発言しない」ことが最善の態度です。何らかの理由でその分別をかなぐり捨てて「個人メディア」を試みるからには、そもそもこの「PV至上主義」という現在のインターネットの重力法則に反することの自覚と、戦略的な見通しを持ち合わせていなければなりません。
「業界の権威」は、自ら意味のあることを語らない
では、具体的に前回示した「業界の権威」と「境界者」のそれぞれのポジションを取るために、実際にどのようなことをするべきか、考えてみます。
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