最果タヒ「ネットの画一的な言葉の中にぽんと入ると、詩は意外に目立つ」

現代詩の枠を超えて活躍する詩人・最果タヒさん。SNSやネット、小説、そして広告媒体など、あらゆるフィールドで言葉を紡ぐ最果さんの言葉の美しさに迫ります。
美術、写真、文学、建築などのテーマについて作家活動を続けるアートコンシェルジュの山内宏泰さんが、その「美しさ」を探ります。

言葉が勝手に走っていくのを、ただひたすら追いかけて定着させている

恋とは呼べない関係が、川とともに流れている。
私たちの気配を潰していくように雨が降り、
まるであなたが遠くにいるように思える。
ここ数年でいちばん、心地いい時間。

(「ビニール傘の詩」 『愛の縫い目はここ』所収)

 詩を「展示」にしてしまったり、商業施設のクリスマスキャンペーンに使ったり。従来の詩人のイメージとはずいぶん異なる活動についてご本人は、

「そういう機会があるのはとにかくうれしい。読もうと思って読まれるばかりじゃなくて、ふと目に入って思わず読んでしまうというのは、詩との出逢い方としていいなと思います」

 と、素直に喜びを語る。

 思えばリアルの場だけではない。最果さんは以前からSNSでも盛んに詩を発信している。

「私はもともとブログに文章を書いていて、それを見てくれた人に『これは詩だ』と言ってもらい、そうか詩なのか、じゃあ詩として発表しようかとの気持ちになった経緯があります。詩を始めたころから、インターネットの世界は大事な発表の場です。

 ツイッターでも詩を書いているんですけど、載せた詩はタイムラインに入るから、ほかの人の投稿と混ざっていく。ほかのいろんな投稿と被さる様子は、喫茶店のあちこちで会話が飛び交っているなかに身を置くみたいでおもしろいです。

 それに、ネットの中だと詩は意外に目立つんですよ。ネットの世界って多様なように見えて、バズるような投稿に関して言えば、最近は結構、画一的な言葉が使われているなと思っていて。タイムライン全体をバーっと見ていると、その世界での文法みたいなものがはっきりとある気がするんです。そうした統一された言葉の中にぽんと入ると、詩はかなり異物感を醸し出すんです。

 ネット上には膨大な言葉が渦巻いていて、そこに埋もれてしまうかもしれないけれど、それはそれでいいと思います。ふとしたはずみに、ただひとりでも読んでくれる可能性があるのなら。偶然の出逢いを大切にしたいという気持ちは強いです。

 詩集として本の形になると、またぜんぜん違うものになった感覚がありますね。詩がモノになって、家に持ち帰れるわけですから。本棚に並べたり枕元に置いたり、その人のテンションによって近づいたり離れたりするのがおもしろい」

 どんなかたちをとっても、詩はそのつどいろんな相貌を見せてくれるというのだ。

 けれど思う。そう言えるのは、もちろん詩に力があればこそ。

 最果さんの詩は「恋」「孤独」「宇宙」「世界」「生」「死」といっただれもが気になることを、平易な言葉だけを用いて書き綴る。切実に思うことがわかりやすい言葉で書かれているから、多くの人に響き、幅広く読まれているのではないか。ご本人の分析は?

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山内宏泰

美術、写真、文学、建築などのテーマについて作家活動を続けるアートコンシェルジュの山内宏泰さん。テーマの根幹にあるのは、「美しさ」でした。美しさとは果たしていかなるものなのでしょうか。毎回、各界でこれぞという人に話を訊きながら、「美しさ...もっと読む

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limeA https://t.co/79DoeIEwLd 約1年前 replyretweetfavorite

nakamura990417 "でもいまはネット上で、だれもが大勢を相手にしゃべっていて、まずはおもしろく伝えなければいけないと思っている。そのためにも、言いたいことを整理して、オチのところを強調して、というふうに自分の言葉を... https://t.co/8PyUmbKszk #NewsPicks 約1年前 replyretweetfavorite