出会い頭に射抜かれる、最果タヒの詩の言葉

現代詩の枠を超えて活躍する詩人・最果タヒさん。SNSやネット、小説、そして広告媒体など、あらゆるフィールドで言葉を紡ぐ最果さんの言葉の美しさに迫ります。
美術、写真、文学、建築などのテーマについて作家活動を続けるアートコンシェルジュの山内宏泰さんが、その「美しさ」を探ります。

 美をさがし求めるのが私の生業である。

 こんなうつくしいものを見つけた。

 出会い頭に射抜かれる、最果タヒの詩の言葉。

あなただけが好きだった、それは、孤独の形をしていた。なにもかもを好きだった頃を思い出す、12月。25日。

(「クリスマスの詩」)

新宿の街を詩が彩る

 12月だからショーウインドウがきらびやかなのは、そりゃ当然と思っていた。

 新宿南口のルミネ前で人待ちをしながら、ぼんやリウインドウを覗く。と、言葉と目が合った。

私は誰かにとって、
だきしめるととてもあたたかい存在なのだと、思い出していた。

 え、と驚く。ウインドウに文字が貼り付けてあるのだ。広告の煽り文句じゃない、ひと連なりの文章が載っている。

 読み進めると、

サンタクロースを信じますか。
雪の結晶を信じますか。
虹の7色を信じますか。
バターと塩キャラメルがおいしいことを信じますか。

(「グッドナイト」)

 時節にぴったりの文章だった。サンタクロース。雪。虹。バターにキャラメル。一つひとつの言葉に喚起されて、頭の中にいかにも年末らしいイメージが描けた。緑と赤、白、深い黄と、色彩の取り合わせまでよくよく考えられている気がする。

 これは最果タヒさんの詩の一節。新宿を含むルミネ全館では「ルミネ×最果タヒの詩の世界」を展開中で、最果タヒさんが書き下ろした5編の詩を題材に、施設を彩る企画が展開されているのだった。

 断片だけでも人の心を瞬時に揺り動かす、最果タヒの言葉の力は強烈だ。その言葉が街角で目に飛び込んでくれば、衝撃はさらに増す。

 たとえ同じ詩であっても、詩集を開いて文字を拾うときとは明らかに感触が違う。こちらが油断していた分、詩の言葉がよりダイレクトに頭の中へ飛び込んでくる。

詩の存在感が、増大する

さよなら、若い人。
きみは飛び降り自殺ができない。
美しい肌がよれていくこと、
目がしぼんで小さな穴になること、
魂がせめて美しい星になればと、願うような、
そんなかわいいおばあさん、
こんにちは。
一緒に、私とお茶しましょう。

(「さよなら、若い人。」 『死んでしまう系のぼくらに』所収)

 詩は綴じられた本の中にだけあるのではない。読者のいるところ、どこへでも詩の側から出向いていけばいい。そんな考えを実践し、ジャンルの壁など軽々と越えていく最果タヒさんのスタンスは、詩人としてかなり珍しい。

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この連載について

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美をさがすのが人生で唯一の目的である

山内宏泰

美術、写真、文学、建築などのテーマについて作家活動を続けるアートコンシェルジュの山内宏泰さん。テーマの根幹にあるのは、「美しさ」でした。美しさとは果たしていかなるものなのでしょうか。毎回、各界でこれぞという人に話を訊きながら、「美しさ...もっと読む

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コメント

saba_tobiuo やはりわたくしのようなS級コピーライターには、もっと勉強が必要なようである。どこがS級だ。お前なんかG級だ。習字7級という意味での。19級という意味でS級と言う言葉を使うな紛らわしい。 https://t.co/TZ8z12PbWs 3ヶ月前 replyretweetfavorite

tt_ss cakesにて、ルミネの詩を山内宏泰さん@reading_photo に取り上げていただきました🎄クリスマスが終われば詩もすべて消えるから、こうして写真に残るのが嬉しいです。 . 次回から2回にわたってインタビューも載ります🎄 https://t.co/e2GmJEMPP6 3年弱前 replyretweetfavorite