どうすればキャッシュが作れるの? 「出版業界のしくみ」とは

「私もファイナンス、勉強しようかな」喫茶店のマスター・石島にファイナンスという言葉を教えてもらった美鈴。利益があってもキャッシュがない森下書房を再興するには、とにかくキャッシュを作らなければいけない。でもどうやって――? 平凡な女子高生が、青春を賭けて、倒産寸前の出版社立て直しに挑む。「出版業界」のリアルを描き出しながら、必須のビジネス教養も一気に学べる、疾走感満載のビジネス小説、第7回!

委託販売/注文販売ってなに?

「ミソじい! ちょっと時間ある?」

会社に戻った美鈴は、早速、会議室で御園をつかまえた。

「だから、ミソじいはやめなさい」

「そんなことより、森下書房が倒産しそうな原因がわかったの」

「原因?」

「そう。利益があるのに、キャッシュがない。そういうことでしょ?」

「少し勉強したようですね。それでは話を聞きましょうか」

興奮する美鈴をたしなめるように御園はいった。

美鈴は、石島から学んだことを整理して、御園に説明した。

・利益とキャッシュは違うこと
・決算書は過去の数字にすぎないこと
・利益が出ていても、キャッシュがなければ倒産すること
・森下書房を救うには、キャッシュが必要なこと
・キャッシュを生み出すには、会計ではなく、ファイナンスの視点が大切であること
・ファイナンスは、「キャッシュ」と「未来」の2軸でとらえるのが特徴であること

ときに専門用語を交えながら話す美鈴に御園は驚いている様子だったが、最後まで口を 挟むことなく、美鈴の話に耳を傾けていた。

美鈴の説明が終わると、うんとうなずいてから口を開いた。

「よく勉強しましたね。たしかに、森下書房が倒産をまぬがれるには、利益ではなくキャッシュが必要です」

「やっぱり、そうよね」

「問題は、どうキャッシュをつくるか、ということです」

「カンタンでしょ。たくさん本が売れれば、現金も入ってくるでしょ」

御園は、やれやれといった顔で首を横に振った。

「それがカンタンではないから、森下書房は窮地に陥っているんです」

「どうして? 本を売ってもキャッシュは増えないの?」

「もちろん、本が売れれば最終的にキャッシュも増える。問題は、いま頑張って売っても、キャッシュが森下書房に入金されるのは何カ月も先だということです」

「え!? 本が売れればすぐにキャッシュが入るわけじゃないの?」

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女子高生社長、ファイナンスを学ぶ

石野雄一

小さな出版社の社長だった父の突然の訃報。 あとを継ぎ、社長に就任した女子高生の美鈴。 しかし会社は倒産寸前。銀行への返済期限は3ヵ月。 「出版不況」「返品の山」「使えない編集者」。 次々と難題が襲い掛かる。途方に暮れる彼女の前に 現れ...もっと読む

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tsuruia 新卒の時に勤務先で習ったことがわかりやすく書かれてる https://t.co/191WTo4BTl 3年弱前 replyretweetfavorite

natukusa 出版社と取次と店舗のお金の流れがわかりやすく書いてある。出版社の金回りが鉄板バズネタの昨… https://t.co/grMEM5GHt7 3年弱前 replyretweetfavorite