委託販売/注文販売ってなに?
「ミソじい! ちょっと時間ある?」
会社に戻った美鈴は、早速、会議室で御園をつかまえた。
「だから、ミソじいはやめなさい」
「そんなことより、森下書房が倒産しそうな原因がわかったの」
「原因?」
「そう。利益があるのに、キャッシュがない。そういうことでしょ?」
「少し勉強したようですね。それでは話を聞きましょうか」
興奮する美鈴をたしなめるように御園はいった。
美鈴は、石島から学んだことを整理して、御園に説明した。
・利益とキャッシュは違うこと
・決算書は過去の数字にすぎないこと
・利益が出ていても、キャッシュがなければ倒産すること
・森下書房を救うには、キャッシュが必要なこと
・キャッシュを生み出すには、会計ではなく、ファイナンスの視点が大切であること
・ファイナンスは、「キャッシュ」と「未来」の2軸でとらえるのが特徴であること
ときに専門用語を交えながら話す美鈴に御園は驚いている様子だったが、最後まで口を 挟むことなく、美鈴の話に耳を傾けていた。
美鈴の説明が終わると、うんとうなずいてから口を開いた。
「よく勉強しましたね。たしかに、森下書房が倒産をまぬがれるには、利益ではなくキャッシュが必要です」
「やっぱり、そうよね」
「問題は、どうキャッシュをつくるか、ということです」
「カンタンでしょ。たくさん本が売れれば、現金も入ってくるでしょ」
御園は、やれやれといった顔で首を横に振った。
「それがカンタンではないから、森下書房は窮地に陥っているんです」
「どうして? 本を売ってもキャッシュは増えないの?」
「もちろん、本が売れれば最終的にキャッシュも増える。問題は、いま頑張って売っても、キャッシュが森下書房に入金されるのは何カ月も先だということです」
「え!? 本が売れればすぐにキャッシュが入るわけじゃないの?」
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