「さぞかしモテたんじゃないですか」「いえいえそんな」
さほどテレビに出る人ではないが、平子理沙がテレビに出ると、周囲の人たちは「肌がキレイ!」や「お若い!」といった類いの発言を機関銃のようにぶつけていく。台本に「機関銃のようにコメントを」などと書かれているのだろうか。芸能人の多くはこの手の機関銃を乱射されると、「いえいえそんな」との謙遜を返してくる。その返しを想定している周囲の人たちは、じゃあ次に何をどうかぶせようかと用意しているはずだが、平子はあまり謙遜を見せることをしない。そのまま引き受ける。だから、乱射後、「乱射を跳ね返さない平子」によって、次なる手を用意できなくなり、その場が少し静まってしまう。あの緊張感を表す特定の言葉はないだろうが、ああいった瞬間にテレビの面白さを感知する。とてもキレイな方なのに、テレビのお決まりに答えないことで、ストレートな「キレイ」とは少し逸れた枠組みで把握されていくのだ。
美男美女がトーク番組やバラエティ番組に登場すると、必ず「謙遜タイム」が用意され、あらかじめ予想できるやり取りをテレビの前で共有させられるのが嫌いである。中学生くらいの頃の写真を見て、「さぞかしモテたんじゃないですか」と聞く。「いえいえそんな」と答える。「そんなわけないでしょう、ねぇ?」と再度聞く。再び、「ホント、そんなことないんです」と否定する。周囲が一斉に「そんなはずないでしょ」と畳み掛ける。これ以上展開する方法はないから、話はどこにも帰着せずに終わる。以前、本連載で吉岡里帆の「謙遜しまくる」様子について記したことがあるけれど、芸能人の謙遜を立て続けに見ると、芸能人でもないのに、その謙遜に正解ってあるのかな、と頭を悩ませ始める。
「わざわざ、こんな番組にお越しにならなくても……」
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