「言い過ぎてしまう自分」がいつも恥ずかしいあなたへ
『夜中の薔薇』向田邦子
(講談社)初出1981
やかましい言葉 VS 美しい沈黙
名脚本家による名エッセイ。古いのに新しい、優しいのに厳しい、黙っているのに声が聴こえてくる一冊。#名脚本家・向田邦子 #近年なかなかお目にかかれない美しい文章を読みたい人に #昭和の名作 #男性鑑賞法も必見 #旅行記もあり #食事も美味しそう #突然の死のあとも読者を魅了してやまない著者最後のエッセイ集
沈黙の美しさを思い出すことができる一冊
黙ることが美しさなのだ、と教えてくれた一冊です。
たとえば誰かに何かを言いたいとき、「言い過ぎてしまう」ことって、ありませんか?
伝わっているかどうか不安で、あるいは思いついたこと全部外に出したくて、誰かに知ってほしくて、いっぱい言い過ぎてしまう。いらない言葉を付け加えてしまう。
過剰。相手に伝えるためには、そんなに言葉はいらないのに。
本当は、もっと黙りたい。
いや、黙った方が美しいなぁ、と思うのです。
反して向田さんの言葉は、いつも「黙る」ことを結晶させたうえで生まれる言葉です。美しいなぁ、と思います。
黙るからこそ、何かを香らせることができる。
ここで紹介するエッセイでも、その「沈黙の技術」はふんだんに用いられています。たとえば『手袋をさがす』という文章の中の、こんな箇所。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。