超能力は、存在するのか?

【第37回】
田舎町で、三か月前に発生した幼女誘拐事件。
さらわれた女の子の母親が「娘は超能力者だった」と言っているらしいのだが……。
小説すばる新人賞作家・行成薫が描く、先読み不能の「超能力」エンターテインメント!



「もちろん、にわかには信じがたいし、超能力者という存在が絡んでいたとして、どう理解すればいいのかもわからん。だが、偶然か必然か、超能力者、というなかなか使わない言葉を使った伊沢と和歌ちゃんの母親が、この町にいる。そして、敷島喜三郎の存在だ。もし、この三点が繫がるとしたら、どうなる」

「それを、部外者の俺に話す、ってのは、どういうことなのさ」

 警察官には、守秘義務がある。現在捜査中の事件の情報は、家族にさえ、明かすことはしない。父親が、事件の話を金田にするのは、初めてのことだった。誰もいない道場に金田を引っ張り込んだのには、理由と覚悟があるのだろう。それこそが、父親とじいちゃんがさっきから纏(まと)っている、殺気の正体だ。

「つまりだ、超能力について、お前に聞きたい」

「俺に?」

「そうだ。超能力者、本人にだ」

 前から父親、後ろからじいちゃんの視線が、金田に集中した。まるで、自分が殺人でも犯して、自供を迫られているような気分だった。

「お、俺が?」

「本庁に、俺の知り合いがいてな。伊沢の情報をいろいろ流してもらった。聞けば、伊沢は格闘家並みの体格らしいじゃないか。お前と組んでみた感じからすると、力で勝てる相手じゃあなさそうだ」

 武道場に呼び出されたのはそういう理由か、と、金田は唾を飲み込んだ。

「いや、そう、かも、しれないけど」

「だが、目撃者の証言からも、伊沢本人の証言からも、お前がスタンガンのような道具を使った様子はない。それに、伊沢は、こう言ったらしいな。超能力で、全身が痺れて動かなくなった」

「そう、なんだ」

「同じような証言をする人間を、俺は何人も見てきてる。この町でだ。ケンカ慣れしているヤンチャ小僧どもが、なすすべもなくテープで手足を拘束されて転がされていてな。皆一様に、痺れて動けなくなった、と言っていた」

 金田は、大きく一つため息をつき、父親の目を見た。真剣ではあるが、おそらく、怒っているわけではない。

「俺だって、気づいて、いたの?」

「半信半疑ではあった。だが、目撃証言があまりにもお前に似通っている。それに、お前が就職して実家を出てからは、不思議なことに、ぱたりとそんなことは起きなくなった」

「まあ、話せば、長くなるんだけども」

「それは後でゆっくり聞こう。単刀直入に聞く。超能力と言われるものは、存在するのか?」

 金田は、少し下を見て、自分が発する言葉の意味を考えた。その一言が、自分の人生を変えてしまうことになるかもしれない。

「……ある」

 金田の一言に、父親が、うん、と唸り声を上げた。 「だとしたら、ずいぶん面倒なことになるな」

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行成薫

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