パパの知り合い? 女子高生社長、喫茶店オーナー・石島に出会う

会社の数字と決算書に呆然とする女子高生、美鈴。たまたま通りがかった喫茶店は、猫が二匹のレトロな趣の不思議な場所だった。マスターとの出会いは、彼女に何をもたらすのか――。平凡な女子高生が、青春を賭けて、倒産寸前の出版社立て直しに挑む。「出版業界」のリアルを描き出しながら、必須のビジネス教養も一気に学べる、疾走感満載のビジネス小説、第5回!

石島との出会い

「そういえば、パパも猫が好きだったな」

美鈴(みすず)は、書店帰りに一軒の喫茶店の看板を見つけた。

店名は「三毛猫茶房(みけねこさぼう)」。看板には「猫、います」と書いてある。今流行りの猫カフェのようだが、外観は純喫茶風でレトロな雰囲気だ。なんとなくパパが好みそうな店構えだった。

本当は購入した決算書の本をじっくり読んで勉強しようと、スターバックスをめざして歩いていたのだが、吸い込まれるように猫カフェの扉を引いた。カロンコロンとドアベルが鳴り響く。室内もまるで純喫茶といった内装で、照明も薄暗い。カウンターが5席、テーブル席が2つとこぢんまりしている。今流行りの猫カフェのポップな雰囲気とは一線を画していた。

肝心の猫は、すぐに2匹発見できたが、2匹とも睡眠中だ。たったの2匹なら、猫カフェというよりも、ただの猫好きのオーナーが経営している喫茶店である。そんなツッコミを入れたくなったが、他の猫は物陰に隠れているのかもしれない。

店内には、他に客はいなかった。

幸か不幸か猫も寝ているし、意外と決算書の勉強がはかどるかもしれない。

「いらっしゃいませ」

低く落ち着いた声がしたほうを振り向くと、店の奥のほうにカフェのマスターらしき人物が立っていた。白シャツに黒いベスト、そして黒い蝶ネクタイ。まるでバーテンダーのようないで立ちだった。黒髪はオールバックにまとめ、金色の丸いフレームの眼鏡の奥の眼光は、スナイパーのように鋭い。

「ずいぶんと静かなお店ですね。今日、猫は2匹だけですか?」

思わず美鈴は尋ねる。

「そうですが、何か?」

「猫カフェっぽくないなぁと思って……」

「うちは〝本格派?のカフェですから」

猫よりもコーヒーのほうに力を入れている猫カフェということかと美鈴は解釈したが、マスターがクセのある人物であることは確かなようだ。

美鈴はメロンソーダを注文すると、先ほど購入した決算書の入門書を開いた。相変わらず猫たちは眠っているので、逆に勉強がはかどりそうだ。これだけ猫が不愛想だと、猫カフェとしては流行らないだろう。お客が入っていないのも当然だと美鈴はひとり納得した。

「えーっと……損益計算書は、5つの利益があります。売上総利益、営業利益、経常利益……なんだか難しいな」

美鈴が一人ブツブツと愚痴をこぼしていると、カフェのマスターがメロンソーダを運んできた。

そして、「お待たせしました」という代わりに、美鈴の名前を呼んだ。

「美鈴さん……ですよね?」

ふいに自分の名前を呼ばれたことに驚き、美鈴は顔を上げた。

「えっ、どこかでお会いしましたっけ?」

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