新しい価値を生み出し「どうだまいったか!」と言いたい
藤野 日本企業が、電気機器の分野で海外の企業に負けていったのはなぜなのか。コンサルティングは、どこの国でもみんなマッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン・コンサルティング・グループなどに頼んでいるわけです。今あるビジネスをどう活用するかということは、日本だってすごく考えているし、技術も手元にある。しかし、最終的に何を捨て、どれを残すかという判断ができない。
山田 MBA的な分析以外の要素が必要なんでしょうね。
藤野 僕は、もしかしたら、社長自身の人生観や哲学、歴史観、場合によってはどれだけ文学に精通しているかなども含めた、世の中をどう見るかというセンスによるなんじゃないかと思うんです。日本ではまだ、そういうリベラルアーツみたいなところも含めた経営の議論がなされていないと感じます。
山田 それは同感ですね。クアルコムの場合は、創業者が大学の先生なんです。それもあって、技術をベースに、今までにない新しいことを世に問うて、おもしろいことを成し遂げたいというのが価値判断の基準になっています。モトローラやエリクソンと戦って、ビジネスのボリュームを大きくするということには、あまり関心がない。だから携帯端末の事業からは手を引いたんです。そんなことより、新しい価値を世の中に生み出して、「どうだまいったか!」と言えれば幸せ(笑)。そういう感覚が、世界規模の会社になってもまだ残っている気がしますね。
藤野 アメリカの本社の経営陣が、そういうことで目を輝かせているんですね。
山田 そうそう。日本のこのクラスの規模の会社の経営陣で、やっぱり目をキラキラさせている感じの人ってあんまりいないですよね。藤野さんは仕事柄たくさんの社長に会っていらっしゃると思うんですが、特に大手の一部上場企業になればなるほど、そういう経営者にお目にかかることはめったにないんじゃないですか。
藤野 そのとおりですね。しかもこの10年、どんどん小粒になってきているような印象を受けます。ちょっときつい言い方をすると、「マトリョーシカ人事」って呼んでいるんですが……。
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