25歳の先の「成熟」を、SMAPはアイドルのままに新しい形で見出そうとしていた。

28年間のSMAPの活動とその思いを、数々の言動から振り返り、幼少期から三十代に至るまでのファンの女性の28年の歴史と共に纏めあげ、「アイドルとは、ファンとは何か」を問い直すアイドルとファンのノンフィクション書籍『SMAPと、とあるファンの物語』。本書を公開する連載、34回目。時代の変化にさえ負けることを許されなくなっていた国民的アイドルグループSMAP。そして新しい未来を選んだはずの“私”。それぞれの「成熟の形」と対峙する。

 こんなタイトルの雑誌記事が登場したのは、SMAPが全員30代になって2年目を迎える2008年のことだ。

「〝困ったときのSMAP頼み〟が通用しなくなった!『数字がとれない!』SMAP人気凋落か」

 2008年春、木村がフジテレビの月9ドラマ「CHANGE」で主演を務めた。記事ではその初回視聴率が24%弱だったことを「微妙な結果」として紹介し、木村の主演作としては低い数字、すなわちこれは木村拓哉とSMAPの人気凋落の表れではないかと大きく取り上げたのだ。

 しかしそこに本当に見出されるべきはゆっくりとテレビ文化が飲み込まれつつある「視聴者の変化」、そのうねりだった。

 そのまま木村の主演ドラマを例に追うと「ロングバケーション」(最終回視聴率36・7%)の放送翌年にあたる1997年、日本におけるインターネットの世帯普及率はまだ6・4%だった。

 それが彼の主演作で歴代最高視聴率を獲得した「ビューティフルライフ」(最終回視聴率41・3%)の2000年頃にはネット世帯普及率が34・0%と増加、さらに「GOOD LUCK!!」(最終回視聴率37・6%)が放送された3年後の2003年にはあっという間にネット世帯普及率は88・1%に達し、この頃から国内ではmixiやGREEなどのSNSサービスが相次いで誕生、ブログの利用者数も急激な伸びを見せていく。

 そして記事の主題となっていたドラマ「CHANGE」(最終回視聴率27・4%)の2008年は、TwitterやFacebookが相次いで日本市場に参入し、さらにインターネットが身近なものへと変わりはじめたタイミングである。

 NHK紅白歌合戦の平均視聴率でさえ10%近く下がった2000年代の目に見えぬ時流、実はその中で木村の「CHANGE」は民放ドラマで年間2位の視聴率を保持している。

 しかし一部メディアはその数字を「終わりの始まり」と呼び始める。

 そしてこの頃初めて、SMAPと人気の上昇していた嵐とを大々的に比較する特集記事も生まれた。

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SMAPの28年間の活動と、とあるファンの女性の28年間。決して交わることはなかった。でも、支えられていた。そんな両者の紆余曲折の歩みから見えてくる、アイドルの“意味”。アイドル文化が生み落とした新世代の書き手によるSMAPとそのファンのノンフィクション。

この連載について

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SMAPとそのファンの物語—あの頃の未来に私たちは立ってはいないけど

乗田綾子

転校を繰り返し、不登校にもなってしまった。思い焦がれた上京は、失敗した。願ったとおりの現実を生きるのは、難しい。だけど――。小学校低学年から30歳に至るまで、とある女性の人生にずっと寄り添っていたのは、親でも彼氏でもなくアイドルだった...もっと読む

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bear_yoshi 「無邪気に可能性を信じていられた時間は、つまりは若さというものは、やがて少しずつ削られていく」 /  2年弱前 replyretweetfavorite