お金(通貨)の価値=使っている人の数×発行している母体の信用

モノをお金でやり取りする“資本主義”から
コトを時間でやり取りする“時間主義”
モノを信用で直接やり取りする“記帳主義”
最後にコトを信用でやり取りする“信用主義”へ —。
今、お金を中心に大きな転換が起こっています。
お金はこれからどうなるのか?
その歴史と仕組み、変化、未来まですっきり解説!
山口揚平の書籍「新しい時代のお金の教科書」を特別公開します。


 通貨の価値を決めるのは信用と汎用

 これまでお金にまつわる色々な話と、どうやってお金が出来てきたのかについて話をしてきました。人々は互いに大事なものをあげたり、もらったり、そしてそれを記帳していったこと、お互いの記帳と精算の歴史、そして王の権威と商人の信用がくっついて中央銀行が出来たこと。

 いよいよお金の本質に迫っていきます。

 お金をお金たらしめているたった二つの要素、それさえ知っていればあなたはお金のマスターになれます。

 お金、一般には通貨ですが、一体、その通貨の価値は何であるか? お金の価値を決める単純な方程式があります。

お金(通貨)の価値=使っている人の数×発行している母体の信用

 です。これがもっとも重要な方程式です。もっとシンプルに言えば、「信用」×「汎用」ということになります。

 お金とは外部化された譲渡可能な信用だと第一章で述べました。その定義に基づけば、円やドルなどの中央銀行通貨は万能ではなく、お金の価値を決めるのは、母体の信用×使っている人の数、に過ぎないということです。

信用とは何か?

 お金をお金たらしめている一つの要素は信用です。信用とは何か? 一言で言えば「(理由を)問い詰められないこと」です。お金の信用に関していえば、「価値があることの理由を説明せずにすむもの」のことです。その結果として人々の間で流通され、経済活動を高速化させる媒介になるのが通貨です。人が信用を創るには価値を積むしかありません。方程式でかけば、信用=Σ価値(信用は価値を積み上げたもの)となります。

 ではその価値はといえば、これにも方程式があります。価値=(専門性+確実性+親和性)/利己心です。

 ただこの本は価値創造の本ではないので、価値の方程式についてはまた別の機会にあらためてお話しします。もしご興味があれば拙著『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』(ダイヤモンド社)や『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』(アスキー・メディアワークス)をご覧ください。

お金と信用は離れつつある

 さて、現在、先進国では、各国ともどんどんお金を刷っています。もちろん日本もです。各国の金融政策の基本は輸出を増やすために自国の通貨を安くするということです。世界中の先進国が自国通貨を安くしようとその競争(希薄化という)が行われています。これは本当に不自然な現象です。母体の経済力を通貨安の政策によってあげようということですが、そうは簡単にはいきません。どんどん通貨を発行することで通貨単価あたりの価値が下がり、それを結局は、徴税か戦争、そのセットでケリをつけてきたのが国家通貨の歴史です。

 少し話を広げるとあらゆる古今東西の戦争の本質は経済戦争にあります。どんな王様も国も子供の喧嘩のようには戦争を始めないのです。戦争には経済的な動機が必ず背景にあります。NHKの大河ドラマのようなヒーローは表面的なものです。明治維新の立役者は坂本龍馬ではないし、日露戦争も秋山好古・真之兄弟の活躍だけが勝因ではありません。やはりなぜ戦争をすることになったのか、その経済的動機と、戦費をそもそもどうやって調達してきたのか、そこに目を向けなければ本質はみえてきません。最近、『お金の流れでわかる世界の歴史』(大村大次郎 KADOKAWA)など、戦争の背景にかならず潜むお金の話を書いた本も出てきているのでご興味があればぜひ読んでみてください。

〝ザ・マネー〟の拡大

 さて、実際、お金(数字)の量的・質的拡大は今世紀に入って急激に起こってきました。

 下の図は2003年と2013年の実体経済と金融経済を比較したものです。実体経済が約1.2倍の成長しかないときに、お金は197兆ドルから710兆ドル、つまり3.6倍くらいになっているのです。そして実体経済と金融経済の差額は約4.5倍から約14倍になっており、実態の裏付けがなく、お金だけがどんどん膨らんでいます。実体経済と金融経済の差が広がりすぎると、ぷつりと糸が切れ、バブルが崩壊し、実体経済が機能しなくなります。デリバティブへの規制強化の影響で2016年において差は約6倍へと縮まっていますが、乖離状態は依然として続いています。


 金融業とは、信用の卸業者のことです。決して信用を創るわけではありません。信用は、価値創造・一貫性・コミットメントをブレンドして発酵させた結果作られるものです。しかしながら金融業者が信用を土台とせず、お金をつくり続けた結果、このような事態になりました。

 先程述べたように現在各国で大規模に金融緩和が起こっていますが、その結果金融破綻のサイクルはどんどん短くなっていきます。

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モノをお金でやり取りする“資本主義”から コトを時間でやり取りする“時間主義” モノを信用で直接やり取りする“記帳主義” 最後にコトを信用でやり取りする“信用主義”へ —。 今、お金を中心に大きな転換が起こってい...もっと読む

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コメント

keep_on_mono (通貨の)信用とは何か? 一言で言えば「(理由を)問い詰められないこと」です。お金の信用に関していえば、「価値があることの理由を説明せずにすむもの」のことです。 https://t.co/pOhgDiXKnX 10ヶ月前 replyretweetfavorite

nakamura990417 "さて、現在、先進国では、各国ともどんどんお金を刷っています。もちろん日本もです。各国の金融政策の基本は輸出を増やすために自国の通貨を安くするということです。世界中の先進国が自国通貨を安くしようと... https://t.co/r9yH7C0WzW #NewsPicks 3年弱前 replyretweetfavorite