高橋源一郎「即応性という作家の仕事」

【第9回】1人目は高橋源一郎さんのご登場です。ご自身の代表作3点として挙げたのは、『さようなら、ギャングたち』(1981)、『日本文学盛衰史』(2002)、『さよならクリストファー・ロビン』(2012)。9・11や3・11のような大きな出来事の後、作家の仕事としてあるべきものは何か。『さよならクリストファー・ロビン』の執筆経緯を伺います。高橋源一郎さんインタヴューの最終話。(聞き手・武田将明)


『さよならクリストファー・ロビン』—即応性という作家の仕事

高橋源一郎(以下、高橋) ただ、カタストロフみたいなことが起こってしまった後、残された者はどうしたらいいか、ということだろうという思いがあって。

『さよならクリストファー・ロビン』は、最初に『新潮』の担当者に「短編を書いてください」と言われたんですが、そのときに「書きたいことがあるんだ」、「すごくいいのを書くから」と言って。もう書く前にわかるんですね。「いいからね」って書いたんです。

登場するのは想像上のキャラクターなんですけれども、カタストロフが起こった後に、言葉を持っている者はどう対処したらいいかということの一つの回答が、自分でも納得のいく形でできた。そのためにはこういう形が必要だったんだな、ということがあってですね。最初は連作の予定ではなかったのですが、これを書いた後、「ちょっと続き、書かせてくれよ」っていうことで書き出したのが最初の三つの作品、「さよならクリストファー・ロビン」、「峠の我が家」、「星降る夜に」ですね。

その後に3・11が起こった。すると、さっき言ったように、9・11の後に10年くらいかかえていた宿題が、急に自分のなかで解けた。そこで僕は、『さよならクリストファー・ロビン』とは別に、9・11に関しての回答ではないんですが、さっき言った未完成の小説を『恋する原発』という形で書き直すのと、両方同時に始めたんです。

そのとき思っていたのは、即応性ということ。3・11のような、ああいう大きい出来事があった後、作家はだいたい虚脱状態になる。それは良い意味でも悪い意味でも、そうですね。悪い意味では、どうしていいかわからないという混乱だし、いい意味では、みんなが粗野な言葉を使うときにはあえて使わないという。

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現代作家アーカイヴ1: 自身の創作活動を語る

高橋 源一郎,古井 由吉,瀬戸内 寂聴,平野 啓一郎,飯田橋文学会
東京大学出版会
2017-11-11

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高橋源一郎さん、瀬戸内寂聴さん、谷川俊太郎さん、横尾忠則さん…小説家・詩人・美術家の人たちは何を生み出してきたか? 自身が代表作を3作選び、それらを軸として創作活動の歴史を振り返ります。創作の極意、転機となった出来事、これからの話ーー...もっと読む

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コメント

keitanakamu 良いインタビューを読ませていただきました。 ----------------... https://t.co/KuCPgeKy1o 3年弱前 replyretweetfavorite

feilong 1件のコメント https://t.co/WO6dyXQaI0 3年弱前 replyretweetfavorite

feilong 1件のコメント https://t.co/WO6dyXQaI0 3年弱前 replyretweetfavorite

EndOfData “そのときに、作家はどうするかというと、複雑性を主張するはずなんです。でも僕は、そうではないシンプルな声をできるだけ早く上げるというのも、作家の仕事としてあるんじゃないか、と。 ” 3年弱前 replyretweetfavorite