PLっていうのは何? ピュア・ラブのこと?」

つぶれかけの出版社の社長に手を挙げた、女子高生の美鈴。しかし、目の前にはまるで呪文のような「会社のお金」が並ぶ。「損益計算書左と「貸借対照表」。これは果たして何を意味にするのか――。平凡な女子高生が、青春を賭けて、倒産寸前の出版社立て直しに挑む。「出版業界」のリアルを描き出しながら、必須のビジネス教養も一気に学べる、疾走感満載のビジネス小説、第4回!

決算書という試練

「森下社長、ちょっとよろしいですか」

そういって、社長室に入ってきたのは経理財務担当の御園(みその)だ。

「ねえ、ミソじい。その『社長』って呼ぶのやめてくれないかな。なんか、そういうキャラじゃないっていうか、恥ずかしいんだよね。あと敬語も嫌だ」

「ダメです。先日の臨時株主総会で正式に代表取締役に就任したんですから。会社とプライベートは分けないと、社員に示しがつきませんよ。それと、私のことは、ミソじいではなく、御園専務と呼ぶように」

「え〜、なんか堅苦しくて、肩こりそう。サラリーマンがストレスたまるっていうのわかるわー。せめて美鈴社長にしてくれないかな。森下社長っていわれても、自分が呼ばれてるって気づきそうもないから」

「そうですね。社員が先代と混同しても困りますからね。それは呑みましょう」

「ところで、さっき渡された決算書ってやつ、全然意味わからないんですけど」

「そうでしょうね。でも、決算書が読めないようでは、社長は務まりませんよ。本でも読んで勉強してもらうしかありませんね」「え〜、夏休みの宿題もあるんだから、そんな一から勉強している時間ないよ」

「そういわれても……」

「じゃあ、かいつまんで教えて。これは社長命令です」

やれやれという表情で、御園は2種類の表を机の上に並べた。

「美鈴社長の右側にあるのは、損益計算書。左側にあるのは貸借対照表です。社長なら、PLとBSくらいは読めないと話になりません」

「PLっていうのは何? ピュア・ラブのこと?」

「違います。PLというのはProfi t & Loss statement の略で、いわゆる『損益計算書』のことです」

「そんえきけいさんしょ?」

「簡単にいうと、会社の売上、利益や損失がどのくらいであるかを示した一覧表です。これを見れば、どのくらい会社が儲かっているか、あるいは損しているかがわかります」

「へぇ〜、それってすごい重要ね。いっぱい数字が並んでいるけど、森下書房はどのくらい損してるの?」

「損はしていません。2016年度は1800万円の利益が出ています」

「えっ? でもうちの会社はつぶれそうなんでしょ。利益が出ているなんて、矛盾しているような気がするけど」

「利益が出ているからといって、会社が順調とはかぎらないんですよ」

「まったく納得いかないんですけど。なんでなのか説明してよ」

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女子高生社長、ファイナンスを学ぶ

石野雄一

小さな出版社の社長だった父の突然の訃報。 あとを継ぎ、社長に就任した女子高生の美鈴。 しかし会社は倒産寸前。銀行への返済期限は3ヵ月。 「出版不況」「返品の山」「使えない編集者」。 次々と難題が襲い掛かる。途方に暮れる彼女の前に 現れ...もっと読む

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