本人のキャラクターが強烈だから、ついイロモノのように捉えてしまいがちだけど、荒木経惟ことアラーキーの写真は実際のところ、一枚ずつがひじょうに美しい。
その美しさは、それぞれの被写体や写真そのものと、時間をかけて付き合い続ける粘り強さに由来するのだ。というのが前回のお話。
日々、空を撮り続けた「空2」より
時間が写真を美しくするというのがたしかならば、写真家はとにかくまず、写真を撮り続けなければならぬ。どうしたら撮ることを持続していけるか。若き日のアラーキーは、きっとそう自問し続けた。
そうして見出した方法は、被写体を日常に求めることだった。
ともに暮らした愛猫チロを撮り続けた
何気ないスナップショットを作品にする創始者は、アラーキー
「スナップショット」とは、日常に起こるあれこれを撮って、それをそのまま作品にする手法だ。
これは昨今ごくふつうに見かけるスタイルだし、写真作品といえばまっさきにそうしたものを思い浮かべるかもしれない。たいへんポピュラーな写真のあり方。
が、ものごとには始まりがある。当たり前のやり方も、創始した人はきっといる。私たちが容易にイメージする日常のスナップショットという「型」を日本で定着させたのは、誰あろうアラーキーだ。
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