写真界の巨匠アラーキーの操る濃厚な「時間」の秘密

写真界の巨匠、アラーキーこと荒木経惟。彼が撮ったポートレートは、被写体の人となりを丸ごと写し撮っています。写真が写すのは、一瞬なのに、どうしてそんなことができるのでしょうか。
美術、写真、文学、建築などのテーマについて作家活動を続けるアートコンシェルジュの山内宏泰さんが、その「美しさ」を探ります。

 美をさがし求めるのが私の生業である。

 こんなうつくしいものを見つけた。

 荒木経惟の写真に滞留している、濃厚な「時間」。


荒木経惟による、安藤忠雄ポートレイト

 安藤忠雄建築の打ち放しコンクリートは、光を最も美しく見せるものとしてある。前回にそう紹介した。安藤建築の美は、12月18日まで開催中の「安藤忠雄展 –挑戦−」(国立新美術館)で実地にぜひ。

 上に掲げたのは、展覧会の告知でメインに使われている写真。いいポートレートだと見入ってしまう。いかにも、半世紀にわたり建築で「挑戦」「闘い」を挑んできた人の顔だ。
 画面を斜めに横切り、顔面を貫く清い光の強烈さにも目を奪われる。 「建築とは光だ」と喝破する安藤忠雄の内面をも、しかと目に見えるかたちにして画面に収めている。
 撮影者の名を聞けば、なるほどさすがと納得する。

 アラーキーこと、荒木経惟(あらき・のぶよし)である。

安藤忠雄の人となりを丸づかみにする、アラーキーのポートレート

 一枚の画面のなかに、なぜかくもひとりの人間の全体を、丸ごと写し留めることができるのか。不思議になるけれど、その方法のひとつは意外に単純。時間をかけることだ。
 カメラが像を写すのはあっという間。シャッタースピードはときに何百分の一、何千分の一秒という短い時間。つまり、1秒に満たない時間で写真は撮れる。
 その一瞬に、時間をかけるとは、どういうことか。

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美をさがすのが人生で唯一の目的である

山内宏泰

美術、写真、文学、建築などのテーマについて作家活動を続けるアートコンシェルジュの山内宏泰さん。テーマの根幹にあるのは、「美しさ」でした。美しさとは果たしていかなるものなのでしょうか。毎回、各界でこれぞという人に話を訊きながら、「美しさ...もっと読む

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コメント

interloid 記憶とは写真、オリジナルブレードランナーを当時観た時の命題だった。……アラーキーの操る濃厚な「時間」の秘密|山内宏泰 @reading_photo | 3年弱前 replyretweetfavorite

mynameisa2c 「50年も経てば、どんな写真だって名作になっちゃうからね。」 3年弱前 replyretweetfavorite

garonnne この記事、よくわかる: 3年弱前 replyretweetfavorite