ビットコインでは、すべての取引記録が一本のチェーンのようにつながっているため、ビットコインを入手するたびに、みなさんのスマホやパソコンにダウンロードしていると、時間もかかりますし、通信料金もバカになりません。
また、大きなデータをインターネット経由でやりとりすれば、途中で盗まれるリスクがそれだけ高くなるという問題もあります。
そのため、ビットコインの取引では、いちいちビットコインをみなさんの手元にダウンロードすることなく、ビットコイン取引所がそのやりとりを代行する仕組みになっています。
みなさんが手に入れたビットコインは、あえて手元に置いておきたいという人を除けば、ほとんどのケースでは、ビットコイン取引所に預けっぱなしになっているのです。
ビットコインは預けっぱなし
みなさんがビットコインを送金するときも、手元のウォレットで「Aさんへ5BTC送る」という指示だけを出し、実際に送金するのは取引所です。
誰かからビットコインを受け取るときも、いちいち自分のスマホやパソコンにダウンロードされるわけではなく、取引所が入金を確認し、その情報をみなさんの手元のウォレットに流しているだけです。
株式投資をするときに、株券をいちいち送ってもらうのではなく、証券会社に預かってもらって、自分は売買の指示を出すだけというのと原理的には同じです。そもそも自分のところにないのですから、仮に自宅に泥棒が入っても、いきなりビットコインを盗まれる心配はありません。
また、スマホやパソコンを紛失しても、預けっぱなしのビットコインが失われることはなく、リモート操作で中身のデータを消去してしまえば、盗んだ人があなたになりすまして取引に参加することもできません。
取引所のIDとパスワードは厳重に管理
ビットコイン自体は盗めませんが、ビットコイン取引所のIDとパスワードを盗まれてしまうと、盗んだ人があなたになりすまして、あなたのビットコインを売買することができます。
どこかのECサイトのログインIDとパスワードを盗まれてしまうと、その人になりすましてログインされ、クレジットカード情報を抜き取られたり、勝手に高価な買い物をされたりするのと同じです。
他人によるなりすましを防ぐために、次の五つの対策を徹底しましょう。
①他人から類推されることのない専用パスワードを用意する。他のサイトとの使い回しをしないようにする。
②専用パスワードは、誰にも見られないように厳重に管理する。
③取引所が提供している2段階認証を設定する。
④スマホやパソコンには、指紋認証などでロックがかかるようにしておく。
⑤パスワードを盗まれたと疑われるときは、すみやかにリモート操作でデータを消去し、念のため、パスワードを変更する。
最近では、フェイスブックのアカウントでログインする人が増えていますが、その場合、フェイスブックのアカウントを誰かに盗まれてしまうと、そのアカウントに関連づけられたすべてのサービスが筒抜け状態になってしまうことがあるので、注意が必要です。
マウントゴックス事件とは何だったのか
では、ビットコインを預けている取引所からビットコインが盗まれる心配はないのでしょうか。自分がいくら注意していても、取引所から盗まれてしまっては、どうしようもありません。
ビットコインが盗まれるのではないかと心配する人が多いのは、マウントゴックス事件の影響が大きいようです。
2014年2月、東京・渋谷に拠点を置く、当時としては世界最大級のビットコイン取引所「マウントゴックス」が経営破綻し、経営者が逮捕されました。ハッキングによって85万BTC(当時の時価で45億ドル相当)が消えてなくなったともいわれています。
しかし、マウントゴックスの事件は、ビットコインやブロックチェーンそのものに技術的な問題があったわけではありません。
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