藤田貴大
風邪をひく、というイベント。
ー初めて会った女子にすること-
演劇作家の頭の中では、初対面の女子もされるがまま。たとえどんなに元気でも、想像上のシナリオでは、何が何でも風邪をひく。ーー「いったい何のために?」などと野暮なことは言わずに、ひとりで健気に暮らす女子的日常劇にしばしお付き合いを。
はじめての女子と対面したときにまずなにを想像するかというと、その女子が風邪をひいたらどういうかんじになるか、ということだ。
これはいつからか習慣になっている。だからぼくに会ったことがある女子はみんなかならず一度は、ぼくの頭のなかで風邪をひいている。それは風邪をひいて、ぼくが看病をするのを想像をするのではない。甘えられるのは嫌いだし、そういう意味での興奮ではない。想像のなかに、ぼくはいない。いてはダメだ。風邪をひいた女子に直接、なにかをしたいわけでもない。具合が悪かったり、酔った女子になにかするとか、ほんとうに最低だ。そうではない。
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又吉直樹さんも絶賛!「透き通った変態性と切なさが最高」
この連載について
藤田貴大
演劇界のみならず、さまざまなカルチャーシーンで注目を集める演劇作家・藤田貴大が、“おんなのこ”を追いかけて、悶々とする20代までの日常をお蔵出し!「これ、(書いて)大丈夫なんですか?」という女子がいる一方で、「透きとおった変態性と切な...もっと読む
著者プロフィール
1985年生まれ、北海道出身。桜美林大学文学部総合文化学科にて演劇を専攻、2007年に『スープも枯れた』でマームとジプシーを旗揚げ。2011年に発表した三連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2013年『てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。』で初の海外公演。さまざまな分野のアーティストとの共作を意欲的に行うと同時に、中高生たちとのプロジェクトも積極的に行っている。主な演劇作品は『あ、ストレンジャー』『cocoon』『書を捨てよ町へ出よう』『小指の思い出』『ロミオとジュリエット』『sheep sleep sharp』など。著書に『おんなのこはもりのなか』『Kと真夜中のほとりで』がある。