私はそのたった1枚のチケットを繰り返し見て、泣くのを我慢して、生きていた。

28年間のSMAPの活動とその思いを、数々の言動から振り返り、幼少期から三十代に至るまでのファンの女性の28年の歴史と共に纏めあげ、「アイドルとは、ファンとは何か」を問い直すアイドルとファンのノンフィクション書籍『SMAPと、とあるファンの物語』。本書を公開する連載、32回目。15回目のデビュー記念日のライブは、満身創痍の中居を4人がサポートしつつ、乗り切った。一方、社会人1年目の“私”は……。

 中居も交えてメンバー全員で話し合いができたのは、昼から行われる当日リハーサルの直前だった。

「4人なのか、5人なのか、あるいは中止なのか」

 中居の肉離れの症状は重く、負傷のない右足だけで立つのがやっと。本人はそれでも痛み止めの注射をしてライブに臨むつもりだったが、患部がふくらはぎだったために「注射打って動いたらもう3週間じゃ治りません」と最終的には医師から止められて断念している。

 ステージは3時間半、今の中居には踊りどころか移動だけでもかなりの負担が見込まれ、そしてそれは本人だけでなく、ともにステージに上がるメンバーやスタッフの動きにも関わる。

 そして何より、そんな状態で来てくれた観客を楽しませることはできるのか。

 メンバーとの話し合いではまず最初に、中居本人から今日は4人で、という申し入れがされる。

 しかしそれを止めたのも、メンバーだった。

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SMAPの28年間の活動と、とあるファンの女性の28年間。決して交わることはなかった。でも、支えられていた。そんな両者の紆余曲折の歩みから見えてくる、アイドルの“意味”。アイドル文化が生み落とした新世代の書き手によるSMAPとそのファンのノンフィクション。

この連載について

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SMAPとそのファンの物語—あの頃の未来に私たちは立ってはいないけど

乗田綾子

転校を繰り返し、不登校にもなってしまった。思い焦がれた上京は、失敗した。願ったとおりの現実を生きるのは、難しい。だけど――。小学校低学年から30歳に至るまで、とある女性の人生にずっと寄り添っていたのは、親でも彼氏でもなくアイドルだった...もっと読む

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