​年をとるとモスキートサウンドが聞こえないという現実的な現実

あなたには、モスキートサウンドが聞こえますか? グラスに入ったビールの違いがわかりますか? 化粧品のノリの違い、艶の違いが、わかりますか? ターゲットの心に寄り添うために、「五感の2つの境目」を見る目について、考えてみましょう。

前回、マーケティングでは狙うべきお客さん(ターゲットですね)を絞り込むために、「セグメンテーション」をすると説明しました。セグメンテーションのモノサシには様々なものがありますが、典型的なのは年齢です。若い人と若くない人はいろんな点で違うからです。

例えば若い人は若くない人に比べて、たくさん飲み食いできる、疲れにくい、髪や肌の艶がある、生活習慣病になりにくい、小さな音も聞こえる、といった違いがあります。こういった違いは、生き物としての違いであると言えます。つまりヒトでなくても、若い犬と若くない犬にもこういった違いがあるのです。この点において、ヒトと動物の間にはあまり大きな違いはありません(最近は、犬も生活習慣病になることがあるそうですね)。

ところでモスキートサウンドって知っていますか? 蚊の羽音のようなキーンという高周波の音です。気持ち良い音ではありません。高周波になるほど年寄りは聞き取ることができなくなります。

ぼくは学部生向けの授業で毎年、モスキートサウンドを学生に聞かせます。「この音、聞こえる人、手を上げて」と言いながら,だんだんと周波数を高くしていきます。これが残酷なほど分かりやすく年の差が出るのですね。周波数が低いときは、ぼくも学生も聞こえます。でも高くなると、ぼくだけが聞こえず、学生がみんな手を上げているという状態になります。倍ある年の差が顕著になる瞬間です。

このモスキートサウンド、夜中に店の前に若い人がたむろするのを嫌がる商業施設が「若い人除け」のために使っているそうです。この音を流すと若い人だけが不快に感じて、たむろするのをやめるのです。

ターゲティングは、誰をターゲットに「しない」のかということも明らかにすることだと、前回、説明しました。こうした商業施設は、たむろするような若い人が寄りつかないように、若い人の生物学的な特徴(すなわち高周波のモスキートサウンドが聞こえるということ)を活用しているのです。搦め手ではありますが、これもまたマーケティングであると言えます。

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今さら聞けないマーケティングの基本の話

松井剛

何気なく使っているマーケティング用語。そのことばの裏には、あなたのビジネス、さらには世の中の見方を変える新たな視点が隠れています。一橋大学商学研究科・松井教授が、キーワードをゆったりと、しかし的確に解説するこの連載。他人の成功体験から...もっと読む

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コメント

t_take_uchi 年をとるとモスキートサウンドが聞こえないという現実的な現実|松井剛 @matsu_take | 8日前 replyretweetfavorite

nishiogikubotan 出来る事ありきで、ターゲットの事考えてないケースがあります。正直、どうにかしたいもんです。 年をとるとモスキートサウンドが聞こえないという現実的な現実|松井剛 @matsu_take | 11日前 replyretweetfavorite

takaakishigenob 年をとるとモスキートサウンドが聞こえないという現実的な現実|松井剛 @matsu_take | 11日前 replyretweetfavorite

matsu_take 今回は、絶対閾と相対閾のはなしです。 年をとるとモスキートサウンドが聞こえないという現実的な現実|松井剛 @matsu_take | 12日前 replyretweetfavorite