井森美幸が出ていると平和

ホリプロスカウトキャラバンでグランプリを受賞、16歳で「まだ誰のものでもありません」のキャッチフレーズで華々しくデビューした井森美幸。なんだかんだ紆余曲折あって、今ではバラエティ番組に欠かすことができないタレントです。今回は、そんな彼女をリスペクトし、ピースフルを感じている武田砂鉄さんが井森美幸について考えます。

会社を辞めると、頻繁に井森美幸を見られる

3年前に会社を辞めてから、「生活はどう変わりましたか」と聞かれることが多く、ひとまず「満員電車に乗らなくてよくなりました」と答えて話を広げるのだけれど、そもそも出社時間が比較的遅めの会社だったから、そんなに満員電車に乗っているわけではなかった。生活はどう変わりましたか、との設問に、答えを20個くらい列挙せよ、と詰め寄られれば、18個目くらいに「頻繁に井森美幸を見ることができる」と答えることになるが、そう答えると「あ、好きなんですね」と続けてくるに違いない。いや、好きとか嫌いとか、そういう単純な話ではないのである。

時折、日テレの昼の情報番組『ヒルナンデス!』のショッピング企画に井森美幸が出てきて、その様子をぼんやり眺めていると、会社を辞めてよかったなと思う。広瀬すずのことが好きな人が、「やった、広瀬すずが出ている」とテレビの前で興奮するのとは違う。画面に広がる安定感、確実に起こるそれなりの笑い、企画が生み出す動揺やどんでん返しを平和のうちに終わらせる技術、全てが牧歌的で温かい。井森美幸が出てくると、画面の中が安定するだけではなく、画面の外の我が家まで安定する。島崎和歌子や森口博子に対するリスペクトと概ね同義ではありながら、リスペクトとは異なるピースフルがある。家の外で働いているとこの感じを味わえないのかと気付けば、「生活はどう変わりましたか」の答えにもなる。

最低限の言動だけで平和が生まれる

井森美幸が出てくると平和な空気に包まれるが、必ずしも井森が平和な空気の発生源というわけではない。ここが不思議なところだ。土曜日の昼に放送されている、有吉弘行とフジテレビ・生野アナとゲストによる町歩き番組『有吉くんの正直さんぽ』では、町歩きをしている途中でその日のゲストが「ちょっとこの後、別の仕事が……」と立ち去り、しばらく歩くと次なるゲストが待機しており、有吉がそれをわざとらしく発見する、というのが番組のお決まりになっている。井森美幸はこの番組にゲストで出ることが多いのだが、わざとらしく発見された時の井森美幸の応対は格別である。普通は、早く気付いてよ、もっと番組に呼んでよ、と有吉にがむしゃらにつっかかり、ゲストが切り替わったことをしっかり伝える時間を設けるのだが、井森の場合はそこら辺がスムーズ。極端に言えば「んもぅ」の一言だけで、すっと入っていったりする。常連とはいえ、その入り方に一切の贅肉がない。

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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

akizo9 めっちゃわかるすけど、「お料理BANBAN!」(懐かしい)に出てた頃は騒がしい姉ちゃんだなと思ってた 11日前 replyretweetfavorite

hashirunoboru 「小島瑠璃子は自分の目標を井森美幸だとし、「『こうなりたいけど、なれない』という理想、憧れます」と言及したことがあるが、どの場面に登場しても最適解を長々と饒舌に話す小島は、もはや井森から遠ざかっている。」 https://t.co/lsByPaegTa 12日前 replyretweetfavorite

sugu_623 なんか、褒め方が良い感じ。 12日前 replyretweetfavorite

daiyatohanakuso あ そうだ。そうか。平和か。 12日前 replyretweetfavorite